阪:(まったく意に介さず)特徴的なのがこのアウトソールです。先ほど申し上げたとおり、アシックスが自社開発した材料を使っています。机の上に擦りつけてそのグリップ性を試してみてください。
F:(机に押し付けて前後左右に揺する)すごい! ズレない。ブレない。
阪:止まるでしょう。まったく動かないでしょう。他のシューズと比べてみてください。
F:ややや、こっちは微妙にズレますね。ぜんぜん違う。この新素材はすごいぞ。
阪:この素材は2016年のリオオリンピックの時に初めて使いました。そしてこのソールのパターン。縦長のブロックになっているでしょう。よく見てください。ここですここ。ブロック、ブロック、ブロックになっています。グリップ力を高めるためには、こうした形状が有効であると研究所が発見して、それを織り交ぜながらパターンの設計に落とし込んで行きました。そして逆側は丸いパターンになっています。
F:どうして全面同じパターンじゃないんですか?
阪:着地した際に力がかかる方向があります。こっちに向くとブレーキ力がこうかかってしまう。その力に対して四角いほうが効率がいい。そして蹴り出すときには逆方向の力になるので、こちらでパワーを伝達するために逆方向でパターンを振っているのです。
マイトのY:あの……私、まったくランニングもマラソンもやらないのでよくわからないのですが、その程度の小さな形状の違いで、走り心地に変わりが出てくるものなんですか。
F:走り心地じゃないよね。
阪:ええ、心地じゃないです。グリップ力の話、性能が変わってきます。
F:もし一歩で1mmほどズレて距離をロスするとするじゃない。マラソンってざっくり3万歩と言われているので、1レースで同じ苦労をして30mも損することになる。たったの1mmの差で。本番で30m前にいる人を追い抜くのって、本当に大変だよ。

マイトのY:……なるほど。フェルさんの説明にしてはわかりやすい。
阪:今までの我々のシューズは、「人の動きに合わせて曲がる」というのが設計方針でした。指が曲がる部分では、それに沿ってシューズも曲がるという考え方です。
今回のシューズは、そうした部分を踏襲しつつも「このシューズがなければ達成できない人の動きをさせてあげましょう」というのがコンセプトです。
マイトのY:おー!
臼:なにはともあれ、履いてみませんか。
F:それはもう、ぜひぜひ。
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