阪:私は研究所の所属ですから、通常は個別のシューズではなく、もっと根本的なところをやっています。例えば次のこのシューズに乗せるデバイス……僕らはシューズに組み込むそれぞれのパーツをデバイスと呼んでいるのですが……この中足部に入っているような部材ですね。この部材を使って次のモデルにどんな機能を付与するか。あるいはどういった構造で使ったほうが効率的か。そんなことを毎日研究しています。
F:シューズ開発における研究を始めるキッカケはどこでつかむのですか? お客さんの声ですか。
阪:お客様の声ももちろんありますが、我々は広く様々な分野にアンテナを張り巡らせています。例えば科学的な見地から、「新しくこんな論文が出た。だとしたらこんなコンセプトが成り立つんじゃないか」とか。様々な仮説を含めながら、様々な角度で開発を進めています。
F:科学的な見地……。いまおっしゃったのは、素材に関する論文ですか。
阪:私はバイオメカニクスの出身です。人の動きに関するスペシャリストです。ですからそちら方面の論文をサーチすることが多いです。
F:へぇ! 日本にもそんなことを教えてくれる学校があるんですね。ご専攻はなんという科目になるのですか。
阪:スポーツ科学という領域の中のバイオメカニクスです。
F:スポーツ科学。筑波とか……。
阪:私は早稲田です。
「出た、変態!」「変態はあんたでしょう!」
マイトのY:あ、埼玉県の所沢にありますよね。早稲田のスポーツ科学部。
F:それじゃ、学校で学ばれた科目がそのままストレートにお仕事につながっているのですね。
阪:そうですね。実は私、シューズ開発に携わるのが中学生のときからの夢だったんです。
F:すごい。専攻科目がそのまま仕事に生かせる人も少ないですが、子供のころからの夢の仕事に就ける人なんて、本当に滅多にいないですよ。
阪:ええ、もうずっとそればかりを突き詰めに突き詰めて生きてきましたので。
F:変態や(笑)。
マイトのY:変態はあんたでしょうに……。しかし、予想外にすごい人が出てきましたよ。やっぱり実際に取材に出て人に会わねばイカンなぁ……。
F:そりゃそうでしょう。記者が外に出ないで何をやるのよ。阪口さんはもともと陸上の選手でいらっしゃるのですか?
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