藤:それとウチが辛いのは、その5つの市場がやっぱりそれぞれに異なるということです。燃費が悪いなとボヤきながらも、やはり大きいクルマが欲しい人たちとか、ちっちゃいクルマじゃなきゃ嫌な人たちとか、ディーゼルが欲しい人たちとか、ハイブリッドが要るとか、いろいろみんな違うじゃないですか。アメリカだったら車幅が2メーターを超えたって何の問題もないけれど、そんなの日本に持ってきたら怒られるでしょう。
F:なるほど。確かに。
藤:ということは、特定のクルマに集中できないんですよ。そこが非常に難しい。商品を造る上でのバランスがとても難しいんです。
F:でも、ラインナップを絞り込んでいますよね。マツダは車種が少ない。その絞り込んだ車種は、どれもキチンと売れているのですか?
絞り込むと市場に合わせるのが難しい
藤:ええ。もう珍しいぐらいに売れています(笑)。日本ではデカいデカいと言われたアテンザも、全世界で見れば成功しています。まああれは、アメリカと中国のために少し大きくしたんですが……。CX-5も全世界で成功しましたし、CX-8とCX-9みたいに、同じような作りで幅と長さを変えながら別のクルマに作り替えるような工夫もしています。


F:CX-9。あれはデカいですものね。全長が5mを軽く超えてきますから。
藤:一方でロードスターは、アメリカ人に言わせるとちっちゃ過ぎると。もうずっと「小さい、小さい」と言われ続けています。向こうでデザイン描かせたりすると、どんどん大きく、大きくしちゃうので、いや、違う違うと言って押し返したりして(苦笑)。
F:ロードスターの貴島さんもインタビューでおっしゃってました。フォードが親会社だった時代は、大型化との戦いだった、と。
藤:うん。そういう意味では、車種構成のバランスをうまく取るのは、造る側からすれば非常に難しいんです。「アメリカにはこんな大きな市場があります」、と言って、アメリカ向けにドーンと大きくしたクルマはたくさんあります。最近またそういうのが復活して、日本にも入って来ていますよね。トヨタさんとかホンダさんもそうです。RAV4が入ってきたし、CR-Vも入って来た。
F:なるほど。あれはもともとアメリカ向けに造ったクルマでしょうね。SUVなら、ある程度大きくても受け入れられる素地が日本にもできてきたのでしょうか。
藤:その素地となるキッカケを作ったのがマツダのCX-5です。あとは日産のX-TRAIL。
F:とはいえ、いま日本に入ってきているのは、それらよりもかなり大型ですよね。果たして受け入れられるのかどうか。ハイラックスの実績を見ると、いい感じに売れそうな気もしますが。
Powered by リゾーム?