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:そうなってしまう可能性はあります。例えば、メキシコに高品質のスチールメーカーがあって、自動車に適した鉄板があって、16ドル以上の時給を払っている部品メーカーがあって……となっていればいいのですが、なかなかそうもいかないので。

F:なるほど。ちょっと極端な話なのですが、例えば今まで時給8ドルで働いてくれていたメキシコの労働者の給与をアップして時給16ドルにしたら、新NAFTAはOKになるんですか。

:理屈としてはOKですが、それはあり得ないです。マツダの周辺だけ勝手に時給を上げたりしたら、やっぱり周囲が嫌がりますよね。

マイトのY:そもそもやるメリットが何もないじゃないですか。

F:うーむ……。

:だからアメリカから鉄を買ってくるとか、アルミを買ってくるとかしなければいけなくなる。今まで日本から輸入していた鉄をアメリカ製に替えるということは、同じ鉄と言っても種類も特性も全然違うので、それらを全て確認、検証をしなくちゃいけなくなる。

F:大丈夫なんですか、アメリカの鉄って。長いこと炉も止まっていたんですよね。何十年ぶりかで炉に火が入ったなんて向こうのニュースで見ましたが、品質は日本車の基準に見合うものなのでしょうか。何か少し頼りない感じもするのですが。

:それらを全て検証しなくちゃいけないわけです。そういう意味では、ちょっと面倒くさい部分もある。

F:価格はどうなのでしょう?

:アメリカの鉄は高いです。今バババババってすごい勢いで値段が上がっています。

F:もともと値段が高かった上に、みんながそれを使わなくちゃいけなくなった。買いにいくようになったから、当然需給のバランスは崩れる。だったら日本から船で運んだほうが安そうですね。

:日本のほうが当然安いです。

F:安い上に品質も良い。

:品質もぃ……言えん言えん。それは何とも言えん(苦笑)。

F:今、「いい」って言いかけましたよね(笑)。

:言っとらん言っとらん。「言えん」と言ったんだ。

工場が生み出す雇用はどれほど?

F:ともあれ、検査工程を含めいろいろ作業が増えますね。

:そういう意味では仕事は増えます。いろいろ厳しくもなると思う。でもだからといって、向こうでの仕事をやめなくちゃいけないとか、メキシコから撤退しなくちゃいけないとか、そんなことはない。

F:ないですか。

:ないと思いますよ。やっぱりあれだけの規模があり、あれだけの雇用を生み出す工場というのは、一般論としてですが、政府として重視しているはずですから。

F:メキシコ側も必死で維持を図るだろう、ということですね。ちなみに工場の規模としては、どれくらいのものなのですか。日本と比べてどうですか。

:ウチのメキシコがマックスで(年間生産台数が)25万台。普通だいたい工場を一つ建てると20万台から25万台です。

高橋:トヨタでも田原工場では20万台から25万台と聞きますね。

:我々でいったら(広島の)宇品工場で20万台か25万台。(山口の)防府も1、2工場とありますが、1も2もそれぞれ20万台ぐらい。一つの工場で生産台数が、だいたい20万台のイメージですね。

F:へぇ。それはメーカーにかかわらず。