スマホの普及が「サブスク」トラップのきっかけに
パナソニックやトヨタ自動車が挑むサブスクリプション(定額制)でなじみが深いのは、新聞や雑誌の定期購読だろう。インターネットの普及で音楽配信や動画配信のサービスでも広く使われるようになり、最近はプロがコーディネートした服やアクセサリー、化粧品を毎月届けるサービスなど、新たなネットサービスでも導入が進んでいる。
出所:日経ビジネス2018年11月19日号 時事深層「パナとトヨタが挑む販売革命」
サブスクリプション、通称「サブスク」という言葉がビジネスかいわいで広まったのはここ数年のことです。特に2018年から19年にかけて大いに注目を集めました。日経ビジネス以外の媒体でも、同様の傾向があります。現時点で「サブスク」は旬を迎えていると言えそうです。

サブスクリプションが急速に広まった背景には様々な要因がありますが、その中でもとりわけ影響が大きいのは、スマートフォンを用いた決済方法が急速に普及したことでしょう。
後述するように、サブスクリプションというビジネスモデルは取り立てて新しいものではありません。新聞や雑誌などは「定期購読」という形で昔からサブスク商売をしています。ただし、従来のサブスクリプションのボトルネックは、決済に関わるコストが高いことにありました。
サブスクリプションを古くから導入してきたビジネスが、雑誌や新聞の定期購読に限られた理由は、「サービス利用者が定期的にお金を支払う」方法が容易ではなく、集金担当者が購読者の家を回るか、サービス利用者が銀行振込を行う必要があったからです。1980年代以降にクレジットカードが普及し、決済のハードルが低くなってからも、必要事項を申込用紙に記入したり入力したりする手間がかかり、利用者にとってサブスクリプションには心理的なハードルもありました。
決済へのハードルが高い状況はインターネット普及後も変わらず、2000年代まではクレジットカードの情報をネットに登録することに、心理的な抵抗を感じる人が少なくありませんでした。
ところが、スマートフォンが普及したことで、決済に対する利用者のハードルが一気に低下しました。サブスクリプションの利用者はクレジットカードの番号をスマホに登録することで、複数のサービスの決済を一定の信頼性のもとに指先を動かすだけで行うことができるようになり、定額サービスの利用および解約のコストが劇的に低下したのです。
2007年6月に米アップルの初代iPhoneが米国で発売されて以来、ハードウエアとしてのスマホは徐々に普及し、2015 年ごろには日本におけるスマホの普及率が70%(出所:「平成30年版・情報通信白書」)を超えました。スマホ普及の初期段階では、便利な無料アプリやゲームが注目を集めましたが、2015年以降になると決済手段としての機能が前面に出てきました。2018年12月にはPayPay(ペイペイ)の「100億円あげちゃうキャンペーン」が注目を集めましたが、これも利用者にとってスマホ決済のハードルを下げる1つの要因となりました。
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