欲深く、悩み深い「ざんねんな」ニンゲンが動物から学ぶべきこととは? ベストセラー『ざんねんないきもの事典』のほか、多くの図鑑監修を手掛ける動物学者の今泉忠明氏に聞きました。その2回目。

(※この動画は日経ビジネスのコラム「有訓無訓(人は欲深い残念な生き物。だからこそ生を充実させられる)」取材時にスマートフォンで撮影しました。スチルカメラのストロボが光ることがあります)

(聞き手:常陸佐矢佳)

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前回「ニンゲンも最期は骨になる」でお聞きしましたが、ニンゲンが欲を広げてなんでも手元に置いておきたいと願うのは、未来に対しての恐れや不安があるからでしょうか。

今泉忠明氏(以下、今泉氏):そうですね。それは動物にはない感情です。動物は「いま」この瞬間だけで、2つに1つを選んで生きているんですね。「何か落ちている!」→「食べる? 食べない?」というように、選択肢を前にしてプラスかマイナスかを判断しています。その先のことは分からないし、分かろうともしないんですね。

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ニンゲンは考えすぎてあっという間に100年が過ぎます。未来について悩む割に、気づくと目先のことばかり考えていることも多いですよね。

今泉氏:本当はそのさらに先を考えないといけないのに、明日のことだけを考えて明後日のことを考えていない。

動物には「いま」に集中する純粋な強さがある、と。

今泉氏:それは結果的に、ですよ。そう行動しなかったら冬を越せなくて、その遺伝子は絶えてしまいます。たとえば秋にどんぐりをためるという習性があっても、冬が来るからためるということではないんです。日が短くなってくるとなぜかためたくなる。それでせっせとためるんです。実がなっている季節はずーっとためている。そうするとバケツ2杯分ぐらいたまって、ちょうど冬が来るんです。ためないヤツは他から盗んだりしても、結局足りないよね。「冬のためにシマリスさんはどんぐりをためます」という物語がよくあるけれど、先を予測して対処しているわけではない。冬になると毛が真っ白になる雪ウサギがいますが、異常気象で雪が降らないと大変なことになるんです。気温が下がってくると脳でホルモンが出て、自動的に白色に変わってしまう。茶色い原野に真っ白のウサギが走っていれば、たちまちキツネに見つかってしまう。

かっこうの標的ですよね。

今泉氏:ニンゲンはすぐにニンゲン的に解釈しすぎるんですね。冬になるから毛を白くして「目立たないようにしている」って。違うんです。そういうふうに遺伝子に組み込まれているんです。

ニンゲンは森から追い出された、負けてしまった動物だと聞いたことがあります。

今泉氏:やられたよね、ゴリラにね(笑)。武器がない状態で、最初は大変だったでしょうね。森から出た直後は、昼間は地面を歩いて、夜は木の上で寝ていたといわれています。普段は森のへりにいて、チンパンジーみたいなのに脅かされると草原に出ていって。それで二足で立つようになった。これは動物から見ると脅威なんですよ。立ち上がるやつは目線が高いから、強いんです。

 コモドオオトカゲの撮影にカメラマンとして行ったときに、下から撮らないと迫力が出ないから地べたにはいつくばって待っていたんです。すると向こうからコモドオオトカゲがバーッと走ってくる。それで立ち上がると「あ、なんだニンゲンか」って戻っていく。向こうに行ったからまたはいつくばると、またバーッと走ってくる(笑)。彼らは縦か横かしかわからず、クリアには見えていないんです。横はトカゲで敵なんです。けんかのときは立ち上がるから、二ンゲンが立つとすごく怖いみたい。

 ミーアキャットでもクマでもなんでも、襲いかかるときには立ち上がる。だからニンゲンもサバンナに出た時に立ち上がったやつがいるんだよね。それで周囲の動物をウオーッと脅かしたら効果があって、大流行したんでしょう。