パナソニックは、どのようにイノベーションを生み出せる組織へと変わろうとしているのか。パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の樋口泰行社長と、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授の対談を通じて、「大企業病」を打破するためのヒントを探る。
第2回は、入山氏がイノベーションに欠かせない「両利きの経営」とは何かを経営学の観点から解説する。大企業のイノベーションが停滞する本質的な原因とは?
※本対談「日経ビジネス Raise LIVE」は2019年11月7日にパナソニックCNS社の本社(東京・中央)で開催しました
大竹剛(日経ビジネス):もう既に、たくさん質問したいという顔を皆さん、していますが、その前に、入山さんからもお話いただきたいと思います。入山さんにはスライドをご用意いただいています。よろしくお願いします。
入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール教授、以下、入山氏):早稲田大学の入山です。
私は樋口さんみたいな素晴らしい経験は一切していません。ただの頭でっかちの学者ですので、立派なことは言えませんが、一応、米国に10年いましたので、まずは世界の経営学をお伝えしたいと思います。

早稲田大学ビジネススクール教授。1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2013年に早稲田大学ビジネススクール准教授、2019年4月から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。近著に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)(写真:北山宏一、以下同)
日本にいると分からないのですが、今、世界の経営学は急速に国際標準化が進んでいます。「世界の経営学イコール米国でしょ?」と言う人がいるのですが、全然そんなことなくて、欧州も中国でも同じ研究をしています。特に最近、中国はすごいんですよ、学問の世界も。
それだけでなく、中東もブラジルもタイもインドネシアも、日本を除く世界の経営学は国際標準化が急速に進んでいます。みんな英語を使って、同じ経営理論を使って、同じデータ分析やって、同じ学会に出ているんです。残念ながら、そこで活躍する日本人は少ないのが現状なのですが。
もちろん日本の経営学が悪いわけではなくて、素晴らしい成果も多くあります。ただ、もう少しグローバルで戦う必要はあると思います。この世界標準の経営学でデータ解析などをやると、絶対正解というわけではないけれども、どうもこれがビジネスの真理、法則に近いかもしれないという考え方が出てきます。
ビジネスって複雑ですよね。答えがない中で、意思決定をしないといけない。そのときに、経営学は1つの切り口を与えてくれるものだと思っています。
前置きが長くなりましたが、今日も樋口さんが積み上げてこられたことに対して、例えば経営学だとこういう考え方があります、という1つの切り口を提供して、皆さんに少しでもすっきりしていただくことが、僕の役目かなと思っています。ちなみに、12月11日に『世界標準の経営理論』という、世界で初めて全ての経営理論を総なめにした本を出しますので、そちらも参考にしてください。
Powered by リゾーム?