消費者を接点に取引量を拡大する「第1ステージ」から、企業のエンパワーメント(能力拡大)に重点を置く「第2ステージ」に入った中国のインターネット産業。BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)の3大プラットフォーマーに、新興勢力が挑む構図が見えてきた。中でも注目されるのが「TMD」と称される、「今日頭条」「美団点評」「滴滴出行」の新御三家だ。

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第3回 中国のインターネット産業は第2ステージに入った
 中国で「これからはTMDの時代」との声を聞く機会が増えている。「T」はAI(人工知能)を用いたニュースアプリ「今日頭条」の北京字節跳動科技(バイトダンス)、「M」は外食デリバリーなどの美団点評、「D」は配車アプリの滴滴出行を指す。バイトダンスは日本でも人気となった動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」も手掛ける。滴滴出行はソフトバンクとの共同出資会社を通じて、日本でも配車サービスに乗り出している。

 これら新御三家に共通してみられるのは、2010年代のスマートフォン普及や高速無線通信「4G」の導入を機に、新たな「事業参入ポイント」を見つけ出し、「アルゴリズム」への開発投資を積極化していることだ。

 今日頭条は、AIを使って利用者に合ったコンテンツをレコメンドする仕組みを構築したし、美団と滴滴は位置情報を利用して出前サービスや配車サービスの展開につなげた。キャンペーンなどを駆使して、消費者を顧客として集めると同時に、集まった大量のデータを活用して、レコメンドや位置情報の精度を高める「アルゴリズム」を開発し、顧客の満足度を高めることに成功した。そうして、百度(バイドゥ)、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)の「BAT」が牛耳ってきた中国プラットフォーマー界でじわじわと存在感を高めることになった。

 企業人の読者の方には共感していただけると思うが、1つの組織体で技術志向と営業志向を共存させることは、組織のマネジメントとして決して簡単ではない。だが、TMDは、経営者がトップダウンで異なる文化を自社内で両立させ、経営スピードを確保している。

 技術開発や顧客開拓を先行投資型で進めるには資金力が必要となる(投資資金が続かなくなったら競争の舞台から降りざるを得ない)が、そうした課題にも果敢に挑む。80年前後に生まれた新世代の経営者たちは大変な読書家としても知られる。自社の強みを磨き、結果を出しながら、自らマーケットや投資家への発信力を持っていることも見逃せない。

 ここからは、TMDのビジネスモデルについて見ていこう。

今日頭条:老舗をしのぐ「ニュースアグリゲーター」

 アルゴリズムにより競合との差異化を図り、成長を遂げた新プラットフォーマーの代表格が、ニュースアプリ「今日頭条」を提供する北京字節跳動科技(バイトダンス)だ。

 2012年に設立したバイトダンスは同年に、顧客の趣味嗜好に合わせたコンテンツを自動配信する「ニュースアグリゲーター」の役割を果たす「今日頭条」の提供を開始。16年にはショート動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」を立ち上げ、17年に「TikTok(ティックトック)」の名前で海外への提供も始め、日本でも人気に火がついた。百度など「BAT」は中国国内で圧倒的な影響力を持つプラットフォーマーだが、バイトダンスは海外でも実力が認められた中国プラットフォーマーといえるかもしれない。

 今日頭条は、「あなたの興味があるニュースが、今日のヘッドラインになる」という理念を表現している。AI(人工知能)を駆使して、利用者の閲覧記録から、興味のありそうなコンテンツを表示していく。単にニュース記事を集めたサイトとは異なるこの高度なレコメンド機能が消費者の支持を集めた。

今日頭条は「あなたの興味があるニュースが、今日のヘッドラインになる」を理念にしている(写真:ユニフォトプレス)

 今日頭条は19年6月時点で、テンセントが手掛ける「騰訊新聞(テンセントニュース)」に次ぐ月間2.6億件のアクティブユーザーを獲得し、ニュースアプリでは老舗の「新浪(Sina)」や「網易(ネットイース)」「捜狐(Sohu)」をしのぐ存在となった。筆者も、日々の中国のニュースは今日頭条を見ることが習慣になっているが、関心あるテーマのニュースが表示されるので、重宝している。

 AIはTikTokのような動画アプリでも使われている。独自開発のアルゴリズムを最大の武器に、扱うコンテンツの種類を増やすのが、同社の基本戦略といえるだろう。

 最近は、コンテンツ制作者がマネタイズできるように、頭条小店(ショップ)やライブ配信決済ツールなどにも力を入れている。コンテンツを見る側を楽しませるだけでなく、コンテンツの制作者ももうかる仕組みを作り上げる。コンテンツを核としたプラットフォーマーとして存在感は一段と高まりそうだ。

続きを読む 2/3 生活総合プラットフォーマーの美団点評

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