ここまで中国プラットフォーマーに対する着目点として「社会インフラの構築」「市場の解体と再構築」と「オープン化戦略とガバナンスの両立」の3点を示し、騰訊控股(テンセント)のケーススタディーを通じてこれらの特徴がどのようにつくられているのか解説した。3回目となる今回は、中国デジタル化の進展・変化の流れを大づかみで捉えてみたい。

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第2回 テンセントに見る競争優位構築のメカニズム

 中国のIT(情報技術)業界の企業人と会話すると、「互聯網下半場」というキーワードが頻繁に交わされる。「中国のインターネット産業は第2ステージに入った」という意味で、騰訊控股(テンセント)の馬化騰・董事会主席や外食デリバリーなどの美団点評の王興CEO(最高経営責任者)が2016年に市場の変化と自社戦略の変革を打ち出すために提起したのが始まりとされる。

 中国では2000年前後からの「第1ステージ」においては、インターネット人口の増加を背景に、消費者を「集客」して、広告費などの形で企業に「販売」することが、プラットフォーマーの基本的な収益モデルだった。先行投資型でまずは顧客規模を確保する戦略は、投資家にも支持された。

 彼らは次の2つの技術革新の波をうまく捉えていた点も見逃せない。

 1つはインターネットの普及。これで広大な中国で地域を越えて、モノを売ったり、コミュニケーションツールを提供したりできるようになり、顧客規模の拡大につながった。

 もう1つはスマートフォンの普及。手のひらに収まる高度な情報端末であるスマホは、個人の情報処理能力を大きく高めた。さらに高速通信が可能な「4G」通信網が整備されたことにより、大容量の音声や画像のデータをやり取りできるようになった。

中国ではもはやスマホが欠かせない(写真:ユニフォトプレス)

 こうした中で急成長したのが百度(バイドゥ)、アリババ集団、テンセント、京東集団(JDドットコム)の「BATJ」だ。10年以降に創業したニュースアプリの「今日頭条」や美団点評、配車アプリの滴滴出行(ディディ)といった新興勢も独自のサービス領域で消費者接点をつくってきた(今日頭条、美団、滴滴は「TMD」とも称される)。

 しかし、ネットが中国全土に行きわたった10年代後半からネットユーザーの増加ペースは鈍り始める。16年12月時点で中国インターネット人口は7.3億人に達し(中国インターネット情報センター報告書に基づく)、インターネット人口の増加を前提とするビジネスモデルの限界が明らかになってきた。

 そこで、テンセントの馬氏らは自社の戦略重点を「企業(Bサイド)の効率化・低コスト化、収益向上」にシフトすることを打ち出した。消費者(Cサイド)を接点に取引量を拡大する戦略から、企業(Bサイド)のエンパワーメント(能力拡大)に重点を置くことで事業の裾野を広げようとしたのだ。この変化を彼らは「互聯網下半場」と名付けた。

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