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 日本が知らなければならない中国プラットフォーマー。まずは、騰訊控股(テンセント)の金融事業を中心に、プラットフォーマーの地位をどう手に入れたのか見ていこう。

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第1回 中国プラットフォーマーを知るための3つの着眼点

 テンセントは、時価総額世界第8位(2019年8月末時点、月末株価×発行済み株式総数)の中国を代表するプラットフォーマーである。時価総額は同7位のアリババ集団と双璧をなす。

テンセントはアリババと双璧をなす中国を代表するプラットフォーマーだ(写真:ロイター/アフロ)

 1998年に中国の改革開放の先進地として成長を遂げつつあった南部、深センで設立。翌年にPC向けオンライン・コミュニケーション・アプリ「QQ」の提供を始め、2011年にスマホ向けの「微信(WeChat)」をリリースしてモバイルへの転換に成功した。こうしたコミュニケーション・アプリ(QQ、WeChat)で集客し、「王者栄耀(Honor of Kings)」などのゲームで稼ぐことが基本的な収益モデルだ。

 テンセントは創業以来、サービスやコンテンツ開発のイノベーション志向が強いとされてきたが、2010年代前半にエコシステム型企業への戦略転換を図った。それまで「人と人とをつなぐ」ことがテンセント・プラットフォームの基本的な機能だったが、形成してきた顧客基盤を生かして「人と企業をつなぐ」機能を強化したのだ。

 戦略転換の中核を担ったのが、13年にリリースしたモバイル決済ツール「微信支付(WeChatPay)」だ。 テンセントは、14 年にアリババに次ぐ規模を誇ったネット通販大手の京東集団に、15年には外食デリバリーなどの美団点評に出資して、エコシステムで提供される商品・サービスを強化した。これらパートナー企業と消費者とをつなぐ役割を果たしているのが、微信支付だ。

 テンセントは微信支付から得られるデータに基づき、消費者やエコシステム参加企業の信用を「騰訊信用」で分析・スコアリングして、信用評価体系を構築している。そして、消費者の生活シーン、企業のビジネスシーンに密着する形で、小口融資や保険、理財などの金融サービスを配置して、プラットフォーム上の取引の活性化を図っている。

 テンセントの金融事業の中核を担うのが微衆銀行(We Bank)だ。従来の金融機関のサービスでは顧客対象としづらかった個人や中小企業を対象に、タイムリーに資金供給することを通じて、エコシステムの取引を増大する役割を果たしている。

 微衆銀行の主力サービスである消費者向けローン「微粒貸」は、小口(融資金額500元~30万元)、短期(1日単位での借り入れ・返済が可能)、無担保、即時性(融資申請に対し6秒以内で可否を回答)を特徴とする。その方式として、テンセント・エコシステムや政府系信用情報システムなどのデータに基づき、QQ、微信の顧客に対し信用調査を行い、資金需要を予測して融資提案をしている。

 微粒貸の貸付資金の80%は伝統的銀行が、20%を微衆銀行が提供しており、利息収入を7:3(微衆銀行が3割)でシェアしている。微衆銀行は、自らのポジションを「顧客と金融機関をつなぐ」と位置付けており、既に58銀行(2018年10月時点)がパートナー契約を締結している。