ネットとリアルの融合、AI(人工知能)、顔認証など、中国で進むデジタル化の動向について毎日のように報道されている。中国のデジタル産業をけん引するのは、インターネット検索大手の百度(バイドゥ)、ネット通販のアリババ集団、そしてゲームや対話アプリの騰訊控股(テンセント)の「BAT」と称されるプラットフォーマーだ。最近はAIを用いたニュースアプリ「今日頭条」や、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)、外食デリバリーなどの美団点評といった新たなプレーヤーも続々と登場、存在感を高めている。

 巨大な市場規模や政治体制の違いからよそ事のように見える中国プラットフォーマーの急成長。中国のデジタル経済圏が広がり、日本企業にも直接的なインパクトを及ぼし始めている点も見逃せない。

 筆者は企業人として、中国企業との合弁会社の経営や中国政府向けプロジェクトのマネジメントなどを通じて、中国市場の変化をビジネスの最前線で体感してきた。本連載では企業人の戦略策定や実行の視点に立って、中国プラットフォーマーを取り上げながら、「プラットフォームはどう機能し、どうつくられるのか?」「プラットフォーム・モデルの限界はどこにあるのか?」「プラットフォーマーと伝統的企業との“競争と提携”の構造」を明らかにしていきたい。

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第2回テンセントに見る競争優位構築のメカニズム

 まずは、存在感を強める中国プラットフォーマーの何に着目すべきか、私見を示したい。

【着眼点1】社会インフラの構築

 中国プラットフォーマーによるIT(情報技術)基盤は中国のみならず、アジアなどの新興国のインフラとして根を生やしつつある。「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)はGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)という米国のプラットフォーマーのパクリ」ともいわれてきたが、競争の激しい中国市場で磨かれた「顧客体験」と「テクノロジー」を武器に、今や決済などのインフラを輸出する側に回っている。

 日本企業は国内外で事業を展開する上で、各国でそうした社会インフラづくりに乗り出す中国プラットフォーマーを意識せざるを得ない局面にある。彼らと競争するのか、協業するのか。そうした判断は避けて通れない。

中国ではすでに日本以上にQRコード決済が浸透している(写真:Imaginechina/アフロ)
中国ではすでに日本以上にQRコード決済が浸透している(写真:Imaginechina/アフロ)

【着眼点2】市場の解体と再構築

 スマートフォンの普及による「個人の計算能力」の飛躍的な向上を背景に、中国の消費者はいちいちお店や支店に出向かなくても商品を買ったり、お金を口座から引き出したりできるようになった。デジタル経済圏が、リアルな経済圏を解体してきたともいえる。そして、デジタル技術を活用することで、市場そのものが再構築されている。

 消費者のタッチポイントがネットに移行したように、今後は、製造業を含む企業サイドでも大きな変革の波が押し寄せると推定される。プラットフォーマーが提供するサービスを利用することで、自社の売り上げ規模を拡大させたり、業務の効率化や低コスト化につなげたりする企業が出てくるはずだ。それは商習慣そのものの破壊と再構築を意味することになる。

 一方の伝統的企業も、業務プロセスにプラットフォームモデルを取り入れるなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)に試行錯誤している。中国で起きているデジタル化の衝撃は、日本の近未来だ。

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