新型コロナウイルスの感染拡大と歩調を合わせるように、インドで保護主義的な姿勢が強まっている。

 象徴的なのが、2020年11月、東南アジア・東アジア各国の間で合意に至った東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に対する姿勢だろう。インドは2019年まで交渉に参加していたものの、結局は枠組みへの参加を見送った。その背景としてRCEPで主導的な役割を果たしている中国に対する警戒があったとみられている。その姿勢は2020年6月に決定的になった。印中国境で両軍の衝突があり、インド軍側にも死者が出たためだ。

2020年6月、印中の国境で小競り合いが起き、両軍に死傷者が出た。印中関係は急速に冷え込み、インド各地で中国製品のボイコットを呼びかける運動が起きた(写真:AP/アフロ)
2020年6月、印中の国境で小競り合いが起き、両軍に死傷者が出た。印中関係は急速に冷え込み、インド各地で中国製品のボイコットを呼びかける運動が起きた(写真:AP/アフロ)

 印中関係の冷え込みについては多くのメディアが報じているところだ。ただ気になるのは、インドは中国に対してのみ態度を硬化させているわけではない点だ。現地から見ていると、全体的に保護主義的、内向きな姿勢が強まっている印象を受ける。もともとインドには保護主義が台頭しやすい土壌があり、新型コロナ禍がその台頭に拍車をかけたのではないかと考えている。

 まず、なぜインドではそもそも保護主義が育ちやすい土壌があったと言えるのだろうか。

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この記事はシリーズ「目覚める巨象、インドの変貌」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。