「ユニコーンが100社になっても驚かない」
膨大な人口と拡大を続ける中間層、起業家精神あふれる国民性に豊富なテクノロジー人材、そして世界最安の通信環境、さらにはオンラインで本人確認などができるデジタル公共インフラのIndia Stack(インディア・スタック)の存在や政府の強いサポートなど、インドにはスタートアップの成長を促す環境が整っている。次の10年は彼らの黄金期が始まるだろう。今、インドではユニコーン(評価額が10億ドル以上の未上場企業)の数は24社と言われるが、BEENEXTの創業者でマネージンパートナーを務める佐藤輝英氏は「次の10年の間にユニコーンが100社になっても驚きはない」と指摘する。
インドがこうした巨大なポテンシャルを秘めていることは多くの人が認めるところだろう。では日本企業はインドに何を提供できるだろうか。どうしたら日本にもっと関心を持ってもらえるだろうか。
リブライトパートナーズの蛯原氏は「資金を出す」「顧客になる」「買収する」「日本に参入したい企業のサポートをする」という4つのポイントを挙げる。インキュベイトファンドの村上氏は「インドには資金が足りず、一方で日本には余剰がある」ことに注目すべきだと指摘する。現時点での日本のインドへの投資は、ソフトバンクグループを除くと件数は多いがおしなべて小規模で、創業初期のスタートアップへの投資が中心を占める。より大きなインパクトを与えるには、さらに大きな金額を持ち込み「成長期に入ったスタートアップへの投資を増やすことが重要だ」(村上氏)。
一方で、日本企業はいまだに「インドは複雑怪奇な市場で厄介であり、ビジネスが難しい」という認識を持っているようだ。村上氏はこれにも異を唱える。「ビジネスパーソンとしてやらなければならないことは、日本でもインドでも変わらない」という。最も重要なのは信頼関係を構築することだ。筆者も時折、日本企業の関係者から「信用できるインド人を紹介してください」という理解に苦しむ要望を受ける。そんなことを言っているようでは信頼関係を築くことはできないだろう。村上氏も言うように「こちらが信用しなければ相手も信用しない」のは当然だからだ。
投資ファンドのみならず、多くの日本企業にとってもインド市場は重要だ。その成長を取り込んでいくには、インド人を経営陣に加えるといった、新たな試みが必要かもしれない。「人材を確保していくことが重要」とリブライトパートナーズの蛯原氏は指摘する。世界にはNRI(Non-Resident Indians、印僑)と呼ばれる人たちが散らばっており、ビジネスで成功を収めている人も多い。蛯原氏は日本人が彼らの存在を過小評価しているのではないかと危惧している。
インドの日本に対する期待は強い。特に製造業やハードウエア関係での日本の高い技術力や、長期的な視点で投資する姿勢、そして提携した際の関係構築力などは高い評価を得ている。インド市場への間口は狭まってきているが、日本企業がもっとインドにコミットし、かつ意思決定を早めることができれば日印間の事業連携はまだ十分に可能だと思う。
記事中「BEENEXTの創業者でマネージンパートナーを務める佐藤輝英氏」とあったのは正しくは「BEENEXTの創業者でマネージングパートナーを務める佐藤輝英氏」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。[2019/12/27 14:00]
世界的なイノベーションが生まれる街は、もはやシリコンバレーだけではない。大手IT企業の顔色をうかがうスタートアップが増えてきたシリコンバレーは、むしろイノベーションを生む力に陰りが見えてきているともいえる。
今は世界中で"次のシリコンバレー"と目される国や都市が続々と出てきている。
本書はそんな「ネクストシリコンバー」の現状や今後に加え、日本企業との協業も踏まえて分析・解説したものだ。
取り上げるのは、特にスタートアップで勢いのある、イスラエル、インド、ドイツの3カ国。それぞれのスタートアップは、独自の文化を持ち、魅力にあふれ、将来に期待できる。
「ネクストシリコンバレー」は、何がどうすごいのか。日本企業が協業すべき相手はどこで、どんな方法なのか。革新的なビジネスにつながるきっかけをつかんでもらいたい。
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この記事はシリーズ「目覚める巨象、インドの変貌」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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