「IT(情報技術)大国」。インドをこう表現する人は多い。

 ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の拠点として注目され始めたのは2000年前後のこと。当時は「インドにコールセンターを置けば英語対応できるが、インドなまりがきつすぎて矯正が大変」などといわれてきた。だが足元の風景は一変している。単なる下流工程の開発拠点としてだけではなく、上流工程の企画や設計、さらには研究開発拠点としても位置付けられるようになった。インド・ブランド・エクイティ基金の試算によれば、市場規模は毎年10%のペースで伸びており、2025年までに3500億ドル(約38兆3000億円)に達するという。

 2019年8月には、インドに6万人を超える社員を抱えるといわれる米アマゾン・ドット・コムが、南部の都市ハイデラバードに1万5000人を収容できる最大規模のオフィスを開設したことも話題になった。

米アマゾン・ドット・コムがインドの拠点として南部の都市ハイデラバードに構えたオフィス。1万5000人を収容できる

 市場の7割は国内向けではなく、欧米向けを中心とした輸出が占める。欧米企業と交流し、そのニーズに応えることで、先端の技術や発想が国内の技術者に伝わる。これがインドIT産業の発展に一役買っている側面がある。

ライドシェアから血液検査まで、アプリ一つで完結

 AI(人工知能)にIoT(モノのインターネット)、そしてフィンテックといったテクノロジーがバズワード(はやり言葉)となっているのはインドも同様だ。とはいえ、いわゆるハイテクの世界がインドITの世界で支配的かというと、必ずしもそうとは言えない。むしろ今国内で伸びているのは、ハイテクとローテクが入り混じったサービスだ。リアルの世界にデジタルが浸透した結果、インドではスマートフォン一つあれば自宅に引きこもっていても快適に生活できる環境が整いつつある。

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