グローバル市場へ、注目すべきは「内面の変化」

 「過去20年におけるインド最大の変化は何か」。インドの友人とそんな話を最近したことがある。

 インドを表面的に見れば、車は平然と逆行してくるし、バイクは3人乗り、4人乗りが当たり前。整列しないから行列はぐちゃぐちゃだ。結婚前の男女交際には否定的で、女性の飲酒や男女問わず両親の前での飲酒は避けるべきだとされる。タブーや不文律のようなものも多数存在した。

 クリスマスやバレンタインデーに結婚前の男女がデートをしていたところ、無理やり寺に連れていかれて結婚させられたとか、米国の有名俳優が舞台上で女優の頬に公衆の面前でキスをして一大スキャンダルになったこともある。我々からすると笑い話のようなことが普通に新聞の1面をにぎわしていたのは2008年ごろ、たかだか10年前のことだ。

 では、時にカオスとも表現されるインドの何が変わったのか。街の風景が大きく変わったとか、法規や税制が変わって開かれた市場になったとか、いろいろな変化を挙げることはできる。ただ個人的に大きく変わったと感じるのは、何よりも人々の価値観、特に都市部の人々のそれだ。今でも上述のような伝統的な価値観は存在するが、少なくとも都市部ではあまり強調されなくなった。

 スマホやネットが大衆化し、世界中の情報がどこでも手に入るようになったからだろう。また一部の富裕層だけでなく、ミドル層も海外に出かけるようになったことや、多国籍企業が増えたということも影響しているかもしれない。

デート中のインド人カップル。
デート中のインド人カップル。

 価値観が変われば、消費行動も変わる。かつてはインドの特異性を評して「インドはインドであってインドでしかない」などともいわれたが、グローバルの波にインドの人たちも確実に乗ってきている。昔ながらの混沌(こんとん)とした世界から、世界共通の巨大市場へ変貌しつつあるのだ。

 インドはイノベーションが起きやすい環境の中で新しい産業が育ち、新興企業が隆盛し、さらに人材供給ハブとしての役割を強める。経済大国化にともない、その可能性はますます大きくなるだろう。では日本は、あるいは日本企業は勃興するインドにどう向き合えばいいのだろうか。インドの新しい勢力と手を組むことは果たして可能なのか。インドから求められる役割や機能が、まだ日本にはあると思っている。インドのスタートアップ業界の最前線を歩きつつ、日本に求められる役割についても以降の連載を通じて考えていきたい。

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この記事はシリーズ「目覚める巨象、インドの変貌」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。