世界が頼る、人材の「供給ハブ」

 インターネットの登場により情報革命は大きく進展したと一般的に思われているが、実際は米国の国内総生産(GDP)に占めるインターネット産業の割合はまだ7%程であり、伸び代は大きい。新興国ではなおさら、ネット産業はより大きなインパクトを持って拡大していくだろう。

 この観点から見ると、インドが抱える豊富なエンジニアは魅力だ。先進国と呼ばれる国では人口減少やエンジニアの不足が問題となる一方、インドでは毎年約2500万人もの子どもが生まれ、さらに毎年300万人の大学卒業生が輩出される。しかも、その約半数はエンジニアを中心とした理系大学の卒業生であるといわれる。

 インドは国内のみならず国外にも人材を供給する。米シリコンバレーのスタートアップから米航空宇宙局(NASA)や米マイクロソフトなどの研究所まで、様々な場所で数多くのインド人エンジニアが活躍している。医者や経営者も輩出しており、世界の企業や研究所が大規模な人材供給ハブとしてインドを頼る。

 日本に目を転じれば、10万人単位でエンジニアが不足しているといわれ、さらにその数は2030年に80万人近くまで膨らむと予測されている。しかも人工知能(AI)などグローバルで研究が進む新しい先端情報を得ようと思えば数学と英語の力が不可欠だ。

 一方、インド学生は英語が堪能で、数学や科学も積極的に学ぶから世界各国から必要とされる人材となる。しかも彼らの横のつながりは強い。そのビジネスネットワークは強固で、エンジニアからマネジメントまで、グローバルに広く根が張られている。

目覚める巨象

 インドは13億人の人口を抱え、「眠れる巨象」と呼ばれる。「巨象といわれる割には、なかなか経済的に浮上してこない」と揶揄(やゆ)する声もあるが、少なくともインドが中長期に「大国化」することに疑いの余地はないだろう。中国と比べて成長スピードが遅いと指摘されることもあるが、政治的にも時代的にも、また発展に対する考え方も異なるため両国を同列に論じることは難しい。

 ただ少なくともインドが成長の波に乗っていることは事実だ。2017年のインドのGDPは中国の2006年前後の水準に近いため、インドと中国とは10~15年くらいの開きがあると考えるのが分かりやすい。

 2006年ごろ、私は上海にいた。そこで感じていた経済のうねりを、今のインドにも感じている。この頃の中国はまだ消費市場とは見られておらず、製造拠点として着目され日本からの多くの製造業が移転して来ていた。「消費市場として中国を見るのはまだ早い」とか「いや、そろそろだ」といった話をよくしていたのを覚えている。

 気づけば市内にはあっという間に高層ビルが乱立し、空き地がたくさんあった浦東地区も摩天楼に変わった。そして2008年の北京オリンピック、2010年の上海国際博覧会(万博)を経て、今や中国は世界のイノベーションをけん引する存在となった。

 インドも同じだ。20年ほど前は「荒野」という表現がぴったりだったデリー近郊のグルガオン地区は開発が進み、一大商業地に様変わりした。街は拡大を続けており、いずれデリーとグルガオン地区を中心としたインド首都経済圏は東京を抜いて世界一の人口を抱えるエリアになると見られている。しかも上海と同じような変化はデリーにとどまらずムンバイなどインドの主要都市でも起きている。

 地方都市が拡大進化するスピードも速い。2035年までに最も成長する世界の上位10都市はいずれもインド国内にあり、人口が100万~500万人規模の都市が急成長しそうだ。インターネットやスマートフォンの大衆化により、人々はどこからでも情報にアクセスできるようになった。100万人を超える都市がインド国内には数多くあり、さらに大規模化していくことは、スマホやネットを基盤とする新しいサービスが急拡大する可能性があることを示唆している。

2015年、開発途中だった頃のグルガオン。野良牛が闊歩していた
2015年、開発途中だった頃のグルガオン。野良牛が闊歩していた
10年で荒野から一大商業地に変貌を遂げたグルガオン
10年で荒野から一大商業地に変貌を遂げたグルガオン

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