インド政府が経済の再開に動き出している。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めはかかっておらず、6月7日の1日当たりの新規感染者数は1万人を超えている。それでも厳格な封鎖を続けることは難しくなっており、新型コロナとうまく共存しながら、経済を正常軌道に戻そうと模索している。

まず、これまでのインドにおける封鎖措置について簡単に振り返ってみよう。
政府が全土の封鎖に踏み切ったのは3月25日のことだ。当時のインド政府は経済よりも人命を重視する姿勢を明らかに示していた。外出は基本的に禁止され、ほとんど全ての経済活動がストップした。厳しい封鎖措置は4月半ばまでとされていたが、その期間は後に5月3日まで延長されている。
最初の封鎖期間は「ロックダウン1.0」と呼ばれ、これ以降、延長が決まる度に「2.0」、「3.0」と封鎖のバージョンが更新されていく。封鎖の内容が期間ごとに異なっていたためだ。
「ロックダウン2.0」ではインド全土を一律に封鎖するのではなく、患者数に応じて「レッドゾーン」「オレンジゾーン」「グリーンゾーン」に分け、感染リスクが少ない地域は封鎖を一部緩和する方針を出した。つまり4月半ばには早くも人命だけでなく経済にも配慮する姿勢が見られたわけだ。インド人の多くが従事する農業の再開も発表し、さらに5月には故郷に戻ることを希望する国内移民労働者向けの特別列車の運行も始まった。
5月以降も封鎖は続く。「ロックダウン3.0」は5月17日を期限に、5月4日から始まり、合わせて封鎖の緩和も進んだ。感染リスクが高い「レッドゾーン」については、さらに制限エリアとそうでないエリアとに分け、厳しい封鎖を実施する地域を一層絞り込んだ。この局面では農業だけでなく製造業の一部緩和にも踏み込んでおり、オフィスも制限付きで封鎖解除された。
5月下旬になると「ロックダウン4.0」が始まった。夜間外出やレストラン、ホテル、ショッピングモールなどの営業は引き続き禁止されたが、オフィスは原則的に再開することが許可された。航空各社の国内線も5月25日に一部で再開されている。
そして5月30日から始まったのが「ロックダウン5.0」だ。ただ現地メディアはこれを「アンロック1.0」などと呼んでいる。経済活動の再開に向けた動きが顕著になったからだ。6月上旬からはショッピングモールやレストラン、ホテルの封鎖が解かれる見通しで、7月には状況を見つつ学校も再開するという。その後には国際線や、映画館など娯楽施設の再開なども検討されていく。緩和を進めつつ、患者数が増加したエリアを新たに封鎖するといった柔軟な対応が見込まれている。
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