新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと、約14億人もの人口を抱えるインドが3月25日から全土を封鎖した。今も人々は自由に外出できず、企業は休業を迫られている。ここまで大規模な封鎖は世界でも例がない。今この国では何が起きているのか。

 これまで本連載はインドのイノベーションやスタートアップに着目した記事を掲載してきたが、新型コロナの世界的な感染拡大を受け、今後は数回にわたり封鎖下にあるインドの人々や企業の状況などについてリポートしたい。

 新型コロナウイルスの感染拡大について、インドの人々が深刻に捉え始めたのは3月下旬になってからだと思う。3月上旬までに政府は外国人に対するビザの発給を止め、外国人の往来を実質不可能にした。この頃にはイタリアからの旅行者の感染が発覚するなど、徐々にその脅威についてもニュースになり始めている。それでも、インド人にとっても、我々のような在留外国人にとっても、新型コロナはいまだ遠い存在だった。「人口が多く、かつ密集するこの国で感染が広がれば大変なことになる」、私自身も頭ではこう理解していたものの、身近な危機としては感じていなかったように思う。

筆者が住むデリーのある通りの封鎖前(写真下)と後の比較。渋滞が日常茶飯事だった通りだったが、今は閑散としている
筆者が住むデリーのある通りの封鎖前(写真下)と後の比較。渋滞が日常茶飯事だった通りだったが、今は閑散としている

 多くの人々の認識が大きく変わったのは3月19日のことだ。早くから危機感を強めていたインドのモディ首相は、22日に全土で人々の外出を禁止すると発表し、次いで全ての国際線のインドへの着陸を禁止するなどの措置を取った。私たちは22日に技術やアイデアを競うハッカソンのリアルイベントを開催する予定でいたが、人が集まることができなくなったため、急きょ、運営も含め全てオンラインでの開催に切り替えることを迫られた。「これは今後長く続く全土封鎖の予行演習かもしれない」。インドの友人たちとはこんな話をしていた。外出禁止がたった一度で終わるとは考えにくかったからだ。

続きを読む 2/3 日系駐在員は帰国の途へ、封鎖下の物流には混乱も

この記事はシリーズ「目覚める巨象、インドの変貌」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。