新型コロナウイルスの感染拡大にさらされ、厳しいかじ取りを求められてきたインド。しかも中央政府は今、新たな頭痛のタネを抱えている。インド北部の農家が政府の打ち出した新しい農業関連政策に猛反発し、厳しい抗議活動を展開しているのだ。中央政府が2020年9月に可決した「農業新法」と呼ばれる法律が一部農家の怒りに火をつけた。

 年をまたいだ今も抗議活動は続いている。2020年末からデリーに至る主要国道は抗議活動により一部封鎖された。物流は滞り、工場などでは部品の調達に支障が出たという。1月26日、共和国記念のパレードが実施された日には、トラクターに乗って参加した農家の一部が暴徒化し、政府はモバイルデータ通信を遮断した。ちょうどその頃、買い物に出ていた筆者はモバイル決済が利用できなくなった。現金の持ち合わせもなく、昔ながらの「ツケ払い」をお願いしなければならなかった。

ニューデリーで中央政府が打ち出した農業関連改革に反発し、抗議する人々(写真:ロイター/アフロ)
ニューデリーで中央政府が打ち出した農業関連改革に反発し、抗議する人々(写真:ロイター/アフロ)

旧態依然としたインド農業

 多くの日本の読者にとって、インド農家の「反乱」など対岸の火事かもしれない。それを今回あえて取り上げるのは、インドが持続的な成長を続ける上で避けては通れない課題が、ここには隠れていると考えられるからだ。

 インドは世界でも有数の農業大国として知られるが、産業構造は旧態依然としている。1ヘクタール未満の土地しか持たない零細農家が大多数を占め、流通面では数多くの仲買人(ミドルマン)を経なければ農村から消費地である都市部に作物が届かない。消費者の手に行きつくまでに、7人から8人のミドルマンが介在することも珍しくない。

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この記事はシリーズ「目覚める巨象、インドの変貌」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。