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押井:とは言え、それでも何千万もかかるから「それなり」なんだけど。それでやり過ぎて痛い目にも遭った。どの映画かは言わなくてもわかると思うけどさ。

わかるような、わからないような(笑)。

現代史を映画から学ぶなら、「寓意」「仕掛け」に注目

押井:映画というものを語るときに、特に娯楽映画を語るときにはそういう部分は外しちゃならないテーマなんです。これがないものはただの暇つぶしにすぎない。暇つぶしにすぎないものは暇つぶしとして扱われるし、そういう映画でしかない。「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)といえども、最後にナチスが出てくるんだからね。

エンタメ映画でも評価されているものは何かしら、政治的なものじゃなくてもメタファーがあるんでしょうか。

押井:当然ある。少なくとも私が評価してる映画はみんなそう。サーの映画だけじゃなくて(スタンリー・)キューブリックだろうが、ジェームズ・キャメロンだろうが、誰の映画にもある。キャスリン・ビグローなんかはもっと先鋭な人だから、メタファーもヘチマもない。

※スタンリー・キューブリック……アメリカの映画監督。多彩なジャンルで革新的な作品を多く作った。主な作品に「2001年宇宙の旅」(68)「時計仕掛けのオレンジ」(71)「シャイニング」(80)など
※ジェームズ・キャメロン……カナダ出身の映画監督。「ターミネーター」(84)の大ヒットで注目される。「タイタニック」(97)「アバター」(09)はそれぞれ当時の歴代最高興行収入記録を塗り替えた。押井監督とも親交がある。
※キャスリン・ビグロー……アメリカの映画監督。「ラブレス」(83・モンティ・モンゴメリーと共同監督)で監督デビュー。「ハートブルー」(91)や「K-19」(02)などのアクション映画で頭角を現す。「ハート・ロッカー」(09)で女性初のオスカー監督に。

エンタメと寓意の共存は、「映画で学ぶ現代史」にとっては、非常にありがたいですよね。

押井:しかもたいてい面白いから、お勧めもしやすいわけです。

 そういう意味でも、「ウィンター・ソルジャー」は見たことない人はぜひ見てほしい。あちこちにメタファーが仕掛けられていて、2回や3回見たってわからないよ。私は6、7回、テレビでやるたびについ見ちゃうんだよ。そして新しいメタファーをまた見つけちゃう。「あ、ここにもあった。こんなところにも仕掛けてたのか」って。

(後編に続きます。来週掲載予定です)