
まさか、帯に使わせていただいたショーン・コネリーさんが本の発売直前にお亡くなりになるとは……(書影はこちら)。何本もの映画を楽しませていただきました。謹んでご冥福をお祈りさせていただきます。
「007」から「仁義なき戦い」、そして「野性の証明」に「キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー」、などなどなどをご紹介してきた本連載が本になりました。タイトルはそのまま『押井守監督が語る 映画で学ぶ現代史』。発売前からアマゾンでカテゴリー1位(社会史)をいただくなど、注目されております。
これまでの連載を再編成して公開された時系列に並べ、「映画は時代の不安のタイムカプセル」という視点がより分かりやすくなったかと思います。野田真外さんによる映画の紹介と、増量された西尾鉄也さんのイラスト、そしてなにより、単行本のプレミアムとして、連載では未掲載の「海外ドラマ編」と「アフターコロナの日本映画」を追加しています。
今回はその単行本で加筆された「海外ドラマ編」から、押井監督が総監督を勤めたドラマシリーズ「THE NEXT GENERATION パトレイバー」の秘話の最初の部分を「立ち読み」していただこうと思います。たっぷりとお楽しみください。
(編集担当:Y)
押井:(承前)ある時ドラマシリーズを見始めたんだよね。一時はCSで海外ドラマを山ほど見てた。そうしたら日本のドラマなんかお呼びじゃないぐらい、みんな面白い。よく考えられてるし、単に予算使ってますというだけじゃなくて知恵があって、しかも脚本にすごいお金をかけてるのがよくわかる。
そこで、どういうシステムで作ってるかということをぜひ勉強しようと思ったんだよ。それで「CSI:科学捜査班」(米TV/2000~15、以下「CSI」)とかあの手のやつを浴びるように見た。「FRINGE/フリンジ」(米TV/2008~13)とか「X-ファイル」(米TV/1993~2018)とか、どうやってこのドラマを作ってるんだろうと。どうやって脚本書いて、どうやって撮影して、どういうふうにシリーズのメリットを活かしてるんだろうというのを研究しながら見てたわけ。その成果物が「TNGパトレイバー(2014~15)」だったわけ
ですよ。
「TNGパトレイバー」は、最初から一話60分もののフォーマットで、という話だったんですか。
押井:最初に話が来た時は「30分もののシリーズで24本作ってほしい」という話だったんだよ。でもちょっと待てよと思ったの。30分ものだと正味で22分ぐらいなわけだけど、22分であの手のものをやるとアニメと同じになっちゃうんだよね。事件が起こって、出動して、なんかやっておしまい。それだと「ヤッターマン」の頃と何も変わってない
。
確かにそうですね(笑)。
押井:ちょっと日常があって、事件が起きて出動シーンがあって、現場でワーワーやって、帰ってきてやれやれというさ。何も変わらないじゃん。そして、海外ドラマシリーズの何がいいかといったら「1時間枠」なんですよ。1時間枠だと事件だけじゃなくて登場人物たちを追いかけられる。それは分じゃ無理なの。1本のシリーズをやってせいぜい主人公まわりを多少いじれるぐらい。あとは類型で、いつも同じ反応をする連中として固めるしかない。
押井さんの今までやってきた経験で考えると、それしかできないと。
押井:だからプロデューサーと相談して「30分もの24本じゃなくて1時間枠、52分ぐらいで12本にしない? そのほうが現場も楽だと思うよ」と提案した。
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