
「007」から「仁義なき戦い」、そして「野性の証明」に「キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー」、などなどなど……。
日経ビジネス電子版でお楽しみいただいてきた本連載が本になりました。タイトルはそのまま『押井守監督が語る 映画で学ぶ現代史』(書影はこちら)。発売前からアマゾンでカテゴリー1位(社会史)をいただくなど、注目されております。
これまでの連載を再編成して公開された時系列に並べ、「映画は時代の不安のタイムカプセル」という視点がより分かりやすくなったかと思います。野田真外さんによる映画の紹介と、増量された西尾鉄也さんのイラスト、そしてなにより、単行本のプレミアムとして、連載では未掲載の「海外ドラマ編」と「アフターコロナの日本映画」を追加しています。
「海外ドラマ編」では、押井監督が総監督を勤めたドラマシリーズ「THE NEXT GENERATION パトレイバー」の秘話をたっぷり収録。映画が配信に移行する時代を新型コロナが加速し、その時代に対応していくためにコンテンツビジネスがどう変化していくべきなのか、を、監督が実体験を通して語っています。こういってはなんですが、思いのほかタイムリーなテーマになった、と、編集側としてはほくそ笑んでおります……。
今回はその単行本で加筆された「海外ドラマ編」から、冒頭を「立ち読み」していただこうと思います。冒頭立ち読みと言っても、このパートだけでトータルで4万字以上ありますから、ケチケチしたことはいたしません。いつものボリュームでたっぷりとお楽しみください。
(編集担当:Y)
今回のお題は「海外ドラマシリーズ」ということで、ついに映画の話ではなくなってしまいました(笑)。
押井:これまで何度も「映画の時代じゃない」みたいな話は繰り返されてきたわけだよね。特に邦画の世界はそう言われて久しい。僕が大学を卒業して映画の仕事をしようと思った70年代の後半、すでにもう撮影所は終わりつつあったし、邦画はそろそろおしまいじゃないかという時期だった。そういう意味じゃアンラッキーな時代に遭遇しちゃった。「悪い時期に映画を始めちゃったな」と思っていたんだよ。だからこそアニメスタジオに入ったんだけど。
今に比べれば、あの頃の邦画業界はまだマシだったと思うのですが、若き日の押井青年がアニメに活路を見出したのは邦画業界に見切りをつけたから、というわけではないんですよね。
押井:別にアニメスタジオに未来があるという意識で入ったわけじゃないよ。ほかに行くところがなかっただけ(笑)。だから大学を出た後、タツノコに入る前はしばらくラジオの仕事とかしてた。
なんでまたラジオの仕事を?
押井:僕が家庭教師をやっていたところの前任者だったお姉ちゃんが、たまたま某プロダクションの社長の知り合いで、という流れで。
ずいぶん薄い知り合いですね。
押井:そうそう。結構気風の良いお姉さんだったんだけどさ、「人を探してるみたいだから会ってみない?」って言われて会いに行って、今まで作った自主映画とか見せて「こういうものをやってきた男ですけど」と。そしたら「とりあえず編集はできるんだよな?」って言われたの。もちろんフィルムはいじってたし、音声の編集、ミキシングも致し方なく自分でやってた。こんなダイヤルが4つ付いてるような機材を人から借りてやってたんだけど。ミキシングはともかく、少なくとも(フィルムの)切った貼ったは経験してますよと。だから「じゃあ6ミリテープも扱えるよね?」という話で。
フィルムと6ミリの磁気テープはだいぶ違うじゃないですか。
押井:似たようなもんだよ。斜めに切るか縦に切るかの違いだもん。テープで貼るのは同じなんだから。16ミリだと削ってセメントでくっつけるんだけど、8ミリというのはガッチャンコと切ってテープでバシャッとやればおしまい。6ミリは斜めにカットするだけ。
適当ですねえ(笑)。
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