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(イラスト:西尾 鉄也)

(前編はこちら

前編では何でも撮る三池さんを面白いと思っていた押井さんのところに、三池さんから仕事のオファーが来たところまで伺いました。そのお仕事、「ケータイ捜査官7」のときはどうだったんですか。

押井:あれはシリーズもので、三池さんは総監督で本人も何本か撮ってる。他に監督が数人いてローテーションで回してたの。僕はゲストで2本やった(第18話「圏外の女(前編)」、第19話「圏外の女(後編)」)だけで、脚本はもう1本やった(第35話「ケイタのはつゆめ」)。

三池さんから直接オファーが来たんですか。

押井:そう。基本的には「2本だけやってね」「僕でいいんですか?」というところから始まったんだよね。「たぶん変なことやっちゃいますけどよろしいんですか?」「いや、変なことをやってほしい。何をやってもいい。放送できないものじゃなければ、どんなことをやってもいいから」と。だから温泉が舞台だけどスッポンポンとかそういうのはナシ。

そりゃそうですね。

押井:それでもオンエアさせるために一部変えたところはあるんだよ。主人公の守護霊というか守護天使でヤクザが出てくるんだけど、背中にすごい入れ墨を入れようと思ったんだよ。だけど「入れ墨はダメ」って。放送するのが19時とかだったから。仕方がないんで竜の爪痕にしたの。要するにこれは聖ジョージ(聖ゲオルギウス)だよと。「悪竜と戦った聖ジョージのつもりでドラゴンの爪痕を入れてくれ」という。あくまで聖人というか天使にこだわったの、僕的には。

意外にも優しかった三池監督

押井:お話としては寺山修司をやったんだけど、本当に好き放題やらせてもらったよ。それで他の監督たちは打ち上げのときにものすごく冷たい目で見るわけ。「なんでアンタだけ好きなことやってるんだよ」というさ。

他の方はそうでもなかったんですね。

押井:他はみんな真面目にやってるわけです。携帯電話がロボットに変身して、サイバーものだから設定も凝ってて、縦に太いドラマがあって、本数もあって、わりと真面目にやってたんですよ。だけど僕はそもそもあれ(主役メカ)嫌いだったから。

どうしてですか?

押井:だって当時は携帯持ってなかったんだもん(笑)。僕は携帯が嫌いだったから、携帯は家に置いてきた話で行こうと。主人公がプチ家出する話で、面倒くさいから携帯は机の中に放り込んで、ご丁寧にカギまでかけてきたというさ。で、プチ家出中に旅役者のお姉さんに出会って童貞を失うという話なんだよね。

さすがに劇中ではそんなにはっきりはやってませんでした。

押井:別にやってるシーンはないんだけど。現場でも物議を醸したんだよね。「本当にやったの?」って。本当にやった派とやってない派で分かれたから「どっちでしょう?」とか言って。「絶対やってるよ」というのと「いや、実はやってないんだよね」とか「どうせ寝ちゃったのよ」とか。僕はどっちでもいい。だからどっちというふうに描かなかった。思いたいように思えば、というさ。

ご想像にお任せしますと。

押井:三池さんとはそういうご縁があったんです。そのときには三池さんがどういう監督だかは知ってたし、あれやこれや結構見てたからね。面白い人だろうなきっと、と。会ってみたら本当に面白い。面白いというか、腰の低い丁寧な人。

そうなんですか。

押井:パンチパーマで、外貌は完全にそっちの人。歌舞伎町で向こうからやってきたら嫌だなという。どこからどう見てもそっちの人にしか見えない。でもすごく優しい。腰が低くて。現場でどういう演出してるかは知らないけど。メイキングを見たら役者にもすごい丁寧だった。役者が大好きなんだよね。すごく細かく芝居をつけてたから。そういう意味じゃ僕の現場とは大違い。僕も役者は好きだけど、あそこまで自由自在には扱わないもんね。僕が想像してたドギツい監督じゃなかった。

武闘派ではなかったんですね。