映画監督・押井守氏の連載が帰ってきました。今回のテーマは「映画で学ぶ現代史」。映画は時間つぶし、憂さ晴らしに見るものではなく、「それが作られた時代の不安を封じ込めたタイムカプセル」である、というのが押井監督の考えです。日常に紛れて考えることが少ない「今の我々はどういう経緯でかくあるのか」を、映画というタイムカプセルを開き、押井監督の脱線放題の語りを通して、ゆるく深く学んでみませんか。聞き手と構成は前回(日経ビジネスオンラインで「勝つために見る映画」(2012~13)は、単行本『仕事に必要なことはすべて映画で学べる』)に引き続き、野田真外さんです。
シリーズ
押井守の「映画で学ぶ現代史」

17回
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「パトレイバーTNG」と「海外ドラマはなぜ面白いか」の関係
日本のドラマなんかお呼びじゃないぐらい、みんな面白い。よく考えられてるし、予算だけじゃなくて知恵があって、しかも脚本にすごいお金をかけてるのがよくわかる。そこで、どういうシステムで作ってるかということをぜひ勉強しようと思…
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押井守監督が配信サービスを使わない理由
僕はそういう意味で言えば今の流れから取り残されたというか、上がっちゃったんだよね。岸に上がって眺めていて、波に全然乗ってませんと。そして岸に上がって波を眺めてみると結構いろんなことがわかる、という立ち位置なわけ。
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角川映画は日本映画をどう変えたのか
今の「何でもかんでも原作もの」という素地も角川映画が作ったと言えるよね。あれ以降、アニメもメディアミックスばっかりになった。製作委員会にも必ず出版社やテレビ局が入ってくる。
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「お父さん、怖いよ!」業界を震撼させた角川映画
映画業界じゃない、映像業界ですらない、いわゆる異業種から参入して映画を作るなんて、そんなことをやってるのは他になかった。だから当時は誰もうまくいくと思ってなかったんだよね。
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押井守に麻雀Vシネを撮らせる会社はあるか?
ジャンルの制約の中でものを考えるというのが、一番燃えるんですよ。僕はそういうのが大好き。だから自分の企画でやるということだけじゃなくて、オーダーでものを考えるというのは演出的に楽しめるというか、やりがいがある。
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三池監督曰く「押井さん、放映できれば何してもいいですよ」
ルールを守って退屈なものを作るのか、ルールを無視で破綻しまくってるけど本当に面白かったよなと言わせるのか。どっちをエンターテインメントと呼ぶんだと。日本の映画監督ってそういう意味で言うと、どこかそういう意識が薄い気がする…
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Vシネで出くわした「これ、俺がやりたかった!」映画
ある時期に狂ったようにVシネを見てた。ちょうど「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995)をやってるころだよ。(家は)熱海に引っ越しして、映画の仕事のために東京で単身赴任生活を始めたから、夜は暇なわけ…
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今の20代に「仁義なき戦い」はどう見えるだろう
「仁義なき戦い」の若者たちは自分の欲望を貫くために、盃をもらってヤクザになったんでしょ。菅原文太から田中邦衛に至るまで。そのためにはなんでもやるぜと。人も殺すし、なんだったら刑務所にも行く。
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映画大量生産時代ならではの傑作「仁義なき戦い」
橋の袂で菅原文太とか池部良とかが待ち構えてて「俺も行くぜ」と。単独の場合もあるんだけど、ふたり連れの場合もある。なぜだか大勢で集合しては行かないのね。それやると凶器準備集合罪になるんだけどさ(笑)。最大限でふたりなんだよ…
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「領収書100%OKの男」がリアルだった冷戦期
アストンマーチンでタキシードで、カジノで博打で、金髪のお姉さんで、銃ぶっ放し放題で、殴る蹴るも当然あって、おまけに秘密兵器だもん。男の欲望すべてでしょ。日本の中学生だってしびれるよ。
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007、009、そしてガッチャマンに通じるもの
そういうものはすべては007から始まった……ということはみんな忘れてるでしょ。その忘れちゃったことを思い出させるのが連載のテーマだから、今回のテーマに選んだ。そういう意味では007シリーズというもの自体が語るべきテーマな…
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「時代」を共有できない時代に、文化は成り立つか?
「エレキの若大将」の映画を見るとその時代を思い出す。そういう意味では便利な装置でもあるんだよね。でもそれを同時代で見てない人間にとってはナニモノでもなかったりするわけ。そこがいわゆる「古典」とは違うんだよ。
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「若大将」とチャーラー動画、時代の欲望を比較する
当時の2本立て公開は映画の抱き合わせ商法だよ。「若大将」シリーズも、怪獣映画のついでに見るからこそいいんだよね。若大将を単品で見に行くかっていうと、行かないんだよ。
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アベンジャーズは、肥大化する米軍の見立てでもある
アメリカの建国の歴史に関わるんだけど、アメリカは連邦軍を巨大化させなかった。あくまで地方分権なんであって、今だに州軍は手放さないし。連邦軍が巨大化することを建国者たちは一番恐れて、それでいろんな縛りをつけたの。
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米国が抱いた最大の恐怖「内部に潜む洗脳者」
アメリカ国内はいま格差が広がっててとてもやばい。そんな中、どうやって民意を統一するか。それに絶えず一役買ってきたのがハリウッド映画なわけだ。ハリウッドというのはそういう社会的使命を持っている。
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核ミサイルが降る日、日本人は誰と何を食べたいか
今観ると、当時の日本人がどういう生活意識を持っていたのか、どんな願望を抱えて生きてたのか、すごくいろんなことを思い出す。かつてそういう時代があったんだっていうことだけじゃなくて、実は今も大して変わってねえじゃん……と
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映画は「時代の不安」のタイムカプセルだ
映画は時代の不安を記録する。それは、お上が作る公式記録映画ではなく、エンタメの中に、手を変え品を変えて入れ込まれている「記憶装置」なんだ。
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