2014年 サヨナラ国立競技場

 14年5月、56年の歴史に幕を下ろした国立霞ヶ丘陸上競技場(以下、旧国立競技場)。最後の年には「SAYONARA国立競技場」プロジェクトが催された。下の写真は14年元日、旧国立競技場で行われる最後の天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権大会決勝を観戦したときに撮影したものだ。

2014年元日の天皇杯決勝。聖火台の前に「SAYONARA国立競技場」のパネルが掲げられた
2014年元日の天皇杯決勝。聖火台の前に「SAYONARA国立競技場」のパネルが掲げられた
[画像のクリックで拡大表示]
旧国立競技場における最後の天皇杯決勝で、来場者に配られた記念品のハンドタオル
旧国立競技場における最後の天皇杯決勝で、来場者に配られた記念品のハンドタオル
[画像のクリックで拡大表示]

 旧国立競技場は古いが故に屋根がメインスタンドの上部しか覆っておらず、雨の観戦には不便だった(今は客席全体に屋根があるのが普通)。ただ、その分非常に開放的で、晴れた日の空の広さは他に類がなく、スタンドの向こうには新宿の高層ビル群などを一望できた。

バックスタンドの一番上から撮影。競技場の外まで見渡せるこの開放感が旧国立競技場ならではだった
バックスタンドの一番上から撮影。競技場の外まで見渡せるこの開放感が旧国立競技場ならではだった
[画像のクリックで拡大表示]

 私はサッカー好きなのでその視点で競技場を見てしまうのは容赦してほしいが、サッカーなど球技を陸上競技場で行うと、陸上トラックがある分、観客席からフィールドが遠くなり、様子が分かりづらく臨場感にも欠ける。例えば、横浜国際総合競技場は日本と韓国で開かれた2002 FIFAワールドカップの決勝戦でも使われたが、観客席の傾斜が緩く、陸上競技用のスペースが広い。このためフィールドまでの距離が遠く、サッカー観戦には適さない。

 その点、旧国立競技場は設計が古いおかげか、陸上トラックも8コースしかないなど観客席とフィールドの距離が比較的近くて見やすく、サッカーファンにも愛されてきたのである。そして空に向けた開放感はとても魅力的だった。

 全天球画像で見るとその空の広さは一目瞭然だ。

旧国立競技場の全天球画像
旧国立競技場で撮影した全天球画像。2014年2月撮影(画面左の「…」をクリックすると下部のサムネイルが消えます)

次ページ 5階にある「空の杜」は眺望が良く、開放感がある