大型開発プロジェクトで変貌しつつある東京。その注目エリアをピックアップし、地域の歴史や地形と絡ませながら紹介していく連載です。現地に残る史跡、旧跡のルポも交えて構成していますが、今回はその「番外編」をお送りします。渋谷で進む「駅」の再開発で何が起きているのか、そしてこれから何が起きるのかを追ってみました。
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東京メトロの新駅舎が大混雑をもたらした
2020年1月3日。東京メトロ銀座線渋谷駅の新しい駅舎の利用が始まった。乗車、降車専用に2つに分かれていた幅の狭いホームが、幅12メートルの1つの広いホームにまとめられ、大きく生まれ変わった。
場所も旧駅より130メートルほど東側(青山一丁目寄り)に移動し、明治通りをまたぐ空中駅になった。穴蔵に入るように、列車が東急百貨店東横店(以下、東急東横店)の中に入っていったのと対照的に、外光も差し込む明るい作りだ。駅舎の屋根はM字型に曲線を描くデザインになった。ホームには柱がないため広々とした空間になり、ずいぶん印象が変わった。
ところが、正月休みが明けて、通勤・通学の利用者が本格的に増えると、予想外の大混雑が発生して話題になった。影響を大きく受けたのは京王井の頭線渋谷駅から東京メトロ渋谷駅に向かう人たちだ。JR渋谷駅の中央口の前やその手前の階段付近が大混雑。通路や階段を埋め尽くし、のろのろと進む乗降客の姿は異様だった。さすがに今は落ち着き始めているが、混雑しやすいポイントであることには変わりない。
大混雑の原因は単純明快。京王井の頭線から銀座線に乗り換える通勤客らの動線(下図ピンクの線)がJR利用者の動線(下図緑線)と重なってしまったからだ。京王井の頭線を降りた乗客とJR中央改札を利用するJRの乗客が、改札の前で一緒になってしまうのだ。さらに、数は多くないとはいえ、東急田園都市線、半蔵門線からの乗り換え客の動線(下図青線)もJR中央改札前で重なってしまった。
これまで京王井の頭線を降りた利用者は、JR渋谷駅中央改札を使う人たちと出会う事なく銀座線旧乗車ホームにアクセスできた。しかし、新ホームに向かうにはそのルートは使えない。しかも、新ホームは130メートルも遠くなってしまった。
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