提供:国土交通省

原動機付自転車や電動キックボードを含むすべての自動車で加入が義務付けられている自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責保険)。この自賠責保険が交通事故被害者支援などのためにも使われていることはご存じだろうか。2023年4月から被害者支援と事故防止に充てるための賦課金が自賠責保険料の一部として設けられる。なお自賠責保険料は、2023年4月から自動車事故件数の減少を受けて、基本的に引き下げられる。

事故被害者の支援にも使われる自賠責保険料
被害者支援の更なる充実のために賦課金を新設

 自賠責保険は自動車事故の被害者を助けるための対人保険制度として1955年にスタート。強制保険であるため公道を走行するすべての自動車に加入が義務付けられている。保険が適用されるのは、被害者への補償に限られ、運転者自身の怪我や車両やモノへの補償は一切行われない。

 自動車事故の被害者やその家族、遺族は、突然の事故によって生活が一変する損害を受ける。自賠責保険で最低限必要な金銭的補償を担保しつつ、事故で重い障害を負った方のための専門病院の運営や在宅療養の方への介護料の支給、事故防止対策として先進安全自動車の導入支援なども行われている。

 だが、事故で脊髄損傷や高次脳機能障害を負われた方の社会復帰促進への支援や「介護者なき後」の生活の場を確保するための支援が不十分との指摘もあり、支援の強化が求められている。

 また、自動車事故件数や死者数は減少が続く一方、介護を必要とする新たな重度後遺障害者の数はそれほど減少しておらず、将来にわたって継続的な支援を必要とされる方が多数存在している。一方、昨今の低金利により、現行制度のままでは被害者支援の原資となる保険料の運用益(積立金)があと10年程度で枯渇するおそれがある。

 こうした状況を踏まえ、被害者支援や事故防止対策を安定的かつ継続的に実施するため、自賠責保険では新たな「賦課金」が設けられることとなった。

交通事故死者数と介護を要する重度後遺障害者数 (出典)自動車損害賠償保障制度に係る最近の動きについて(国土交通省、令和3年)
交通事故死者数と介護を要する重度後遺障害者数 (出典)自動車損害賠償保障制度に係る最近の動きについて(国土交通省、令和3年)

新制度が導入されても保険料の総額は引き下げ
自賠責保険が安心して生活できる社会を実現する

 新しく設けられる賦課金の気になる内容だが、自家用車が年間125円、営業用のバスやトラック、タクシーが年間150円、バイクや緊急車両などは年間100円(すべて1台当たり)を負担することとなる。なお、2023年度の自賠責保険料全体は、平均で6.7%の引き下げが決まっており、賦課金が追加されても自賠責保険料全体では基本的に引き下げになる。

 この賦課金により総額で年間約100億円が確保される。これは長期的な支援を行うための貴重な財源として、後遺障害を負った被害者の支援や事故防止対策に充てられる。

 交通事故で被害者や遺族が直面する肉体的、精神的、経済的な負担に対して、継続的なケアや支援は必要不可欠である。賦課金制度は、交通事故被害者への長期的な支援を実現するための新制度。誰もがある日突然交通事故の被害者にもなりうる中、安心して生活できる社会を実現するための制度として、多くのドライバーに理解を深めてもらいたい。

※個別の契約内容についてはご契約中の保険会社様へご連絡ください。

■お問い合わせ先
国土交通省

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