提供:株式会社ファーストリテイリング
財団を創設し教育支援を実践するテニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーと未来を担う次世代へのサポートを多方面で行ってきた柳井正が、経済やスポーツなど独自の視点で子ども支援の重要性を語りあった。その対談を一部抜粋してダイジェストでお届けする。

教育は自分で自分を助ける最大の力
柳井 正氏(以下、柳井):ウィンブルドンで初優勝された2003年に、ロジャー・フェデラー財団を設立されましたね。なかでも子どもの初期教育に軸をおかれた。慧眼でいらっしゃったのだなと思いました。
ロジャー・フェデラー氏(以下、RF):ツアーで世界を回っていると、困難な状況におかれた子どもがいることを知る場面も少なくありません。そのようななかで、たとえ時間がかかるとしても、影響がより深く、広く及ぶような活動を手がけたいと思うようになりました。教育は自分で自分を助ける最大の力になります。子どもの一人ひとりに力がつけば、やがて属する共同体の力になっていく可能性もあります。教育の影響力は個人の成長にとどまらない広がりと将来性があります。
柳井:とりわけ経済的に恵まれていない環境で育っていると、十分な教育を受ける機会が失われてしまう場合が多いですからね。
RF:新型コロナのパンデミックで学校に通えなくなったため、給食を食べることができなくなった子どもたちも増えました。新型コロナの危機が、子どもの食生活や教育の危機にまで直結してしまったのです。
柳井:一方で難民の子どもたちがおかれている状況も深刻です。現在全世界で1億人以上もの難民がいると報告されています。私たちが難民支援事業を始めて20年以上になりますが、当時の難民の数は現在の3分の1近くだったと記憶しています。今はそれどころではないほど事態が悪化してしまった。
小さなところに窓が開く
柳井:プロテニスの頂点にいながら、財団の支援活動も行っておられたわけで、並行してそのような活動を始めたのはなぜですか。
RF:22歳だった私のまわりには、よりよい助言を与えてくれる年長者、メンターの存在がありました。両親、妻、コーチも、私がやるべきことは何か、つねに一緒に考えてくれました。
柳井:普通に暮らしている人にとってメンターはどこにいるんだという話になるかもしれませんが、本当に求める気持ちがあれば、必ず出会えると私は思います。
RF:「コーチに何を学ぶんですか?」と聞かれることがあります。正直な話、コーチの助言全体の1%くらいの部分だけあれば、十分なんです。その1%をきっかけにして、チャンスが生まれてきます。小さなところに窓が開いて、そこから新しい空気が入ってくる──それくらいでいいんです。
柳井:ロジャーさんの新しい小さな窓は、これからどこに向かって開くのでしょうね。
RF:この24年間はほんとうに幸運だったと思っています。これからも人生は続きますから、自分自身についてじっくりと考えたい。また、ユニクロのアンバサダーとしては、次世代育成プロジェクトを通し、世界中のさまざまな場所へ行こうと、チームの皆さんと話をしています。
柳井:しかるべきタイミングでロジャーさんの描く絵が見えてくるでしょう。楽しみですね。
RF:ありがとうございます。私自身も期待しています。
ロジャー・フェデラー
1981年8月8日生まれ。スイス・バーゼル出身。1998年、ATP(男子プロテニス協会)ツアーに初参加。2004年、世界ランク1位となり、以来237週連続の1位を記録。グランドスラム優勝回数20回、ウィンブルドンでの最多優勝回数8回を誇る。2022年9月、ロンドンのレーバー・カップでプロテニス選手の現役を引退した。
柳井 正
1949年2月7日生まれ。山口県宇部市出身。株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長、および、株式会社ユニクロ代表取締役会長兼社長。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との連携による難民支援など、サステナビリティの実現に向けた取り組みに積極的に関わっている。
ユニクロの次世代育成プログラム
ユニクロは世界中の子どもたちを応援する活動をより一層推進するため、ユニクログローバルブランドアンバサダーであるロジャー・フェデラー選手、錦織圭選手、国枝慎吾選手、ゴードン・リード選手、アダム・スコット選手、平野歩夢選手の6名をはじめとする世界の一流アスリートやさまざまな団体と連携し、多彩なプログラムを展開していきます。
全編掲載の「服のチカラ The Power of Clothing」はユニクロ店頭で配布中。
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