川西:にらまれる時が全くないわけではありません。でも、言い方やタイミングを間違えなければ、大抵はうまくいきます。大切なのはフォローアップ。首尾よく奥のポジションに着いたら、協力してくださった方に「ごめんなさい」「助かりました」ときちんとお礼を言う。これでほぼ問題ありません。そうやって私がロールモデルとして奥へ進めば、他の人も追随してくれて、車内の快適性が一気に増すこともありますよ。
とはいえ、暴力沙汰を含めた車内トラブルは連日のように起きていますし、本当にこれまで危険な目に遭遇されたことはない?
川西:全然。だって私、コップ酒を片手に専門紙を読みながら寝転がり、1人で座席を占領しているようなおじさんにだって、向かっていきますもの。
コップ酒に専門紙ですか…。
コップ酒+専門紙おじさんの弱点はパーソナルスペース
川西:でも、ああいう方は、心理学的に言うと「パーソナルスペース」を重視している人がとても多い。パーソナルスペースに他人に侵入されたくないから、周囲が接近しないよう威嚇しているとも言える。ですから、故意に近くに座るといい。すると向こうの方から少しずつ離れていき、より多くの人が座れるようになります。
でも、それはご通勤に使われている丸ノ内線だから可能なことで、他のもっといろんな意味でハードな通勤路線では、危険な気が…。
川西:大丈夫です。私は犬を飼っていて、散歩中、犬のフンを始末しない人にも面と向かって注意しますよ。
相手が、いかにもどう猛な犬を連れ、かつ、いかにもな着こなしの方でもひるまない?
川西:しっかり注意します。ただしその場合、相手が忠告を受け入れるというよりは、その道を通らなくなるケースの方が多いですけど。
なるほど。話をコップ酒と犬から一回、電車に戻しますと、すぐ降りるわけでもないのに中ほどまで進まない人は3タイプに分かれる。(1)気が利かない、(2)周辺環境情報が十分に把握できない、(3)周囲に働きかけて“奥に進む技術”がない、のいずれかだ、と。
川西:そうです。
とすれば、やはり心配なのは(1)と(2)ですね。気が利かないと仕事でも大きなハンディになりますし、周囲を把握する能力も、電車の中の最適ポジションを判断する力程度はないと日常生活にも支障が出かねません。いずれも幼少期の経験が影響するとのことですが、成人後、せめて気が利く力だけでも矯正する方法はありませんか。
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