なるほど。サッカーなら、味方、敵のポジション、ボールの位置といった周辺環境を把握し、次に取るべき最適行動を思考し続けねばなりません。スポーツの多く、特に球技は、周囲に目を配る鍛錬ができそうです。とすると、極論すれば、電車に乗るなりドア付近で意味なく立ち止まられる方は、学生時代、文科系の部活、あるいは“帰宅部”だった可能性が高い、と。
川西:いえいえ、必ずしも運動じゃなくても構わないんです。例えばお習字。半紙の上に文字をどう配置するかバランスを考えるでしょう。そうした作業からも周囲を把握・認知する能力は磨かれていきます。
体育会系優先採用は理にかなっている!?
逆に考えると、「運動も習い事もせず何の趣味もなく幼少期、青年期を過ごした方≒電車で中ほどまで進まない方」という方程式が成立する可能性もあるわけですか。だとすれば、機転が利く新人が欲しい一部の企業が、体育会系の学生やスポーツエリートを優先採用するのも、理にかなっていることになりますね。それではいよいよ最後、電車で中ほどまで進まない人の、3つ目のパターンは何ですか。
川西:気を利かせる力も、周辺の環境を認知・活用する能力もある。でも、“奥に行く技術”がない人たちです。
ああ、それなら分かります。自分は奥に行った方がいいと思っても、通路が塞がっていて進めない。「もう面倒だから今日はドア付近で我慢するか」というタイプですね。僕もたまにそうです。
川西:そんな時でも“奥に行く技術”があれば、通勤時間を少しは快適に過ごせます。
でも、“技術”といっても相当難しいでしょう。殺伐とした世の中ですし、満員電車では皆多少なりともいら立っています。たとえ「すみません」と一声掛けても、奥へ行く際に足を踏みでもすれば、トラブルになりかねません。
川西:そうですか? 私は毎日、奥に行っていますよ。「ごめんなさい。奥が空いているみたいなんで通していただけますか」とか、通路が塞がっている場合は「そこのすてきなピンクのネクタイの方、もう少し奥へお詰めいただけますか」とか声掛けして。
それはメンタルがお強い。そんなことをして切れられたことはありませんか。
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