「たかが」と言っては何ですが、「電車の中ほどまで進む子」を1人育てるだけでも、結構な工夫が必要なんですね。
川西:でも、昔はそれができていたんです。「それが可能な子育て環境」が整備されていたからだと思います。今ほど核家族化が進んでおらず、地域社会も機能していた結果、気が利いたことをすれば褒め、利かないことをすれば諭す大人が、子供の周りにたくさんいました。
「気の利かない人」量産社会になった理由
まず祖父母がそうだったし、近所のお年寄りも他人の子に今よりずっと気さくに声を掛けていました。褒めるにせよ叱るにせよ、皆、話が長かった。あれは、「意味を明確化した褒めであり説教」だった、というわけですか。
川西:加えて今は、子供が気の利いたことをやりたくても、過保護で何も手伝わせない親も増えています。“子供が気を利かせるチャンス”自体が昔より減っているんです。
なるほど。では、「気を利かせる回路の欠落」が電車で中ほどまで進まない第1の理由だとすると、第2の理由はどんなことが考えられるのですか。
川西:第2のタイプは「気を利かせる能力はあるが、周囲が見えていない人」です。言い換えると、「ビジュアルフィールドが狭い人」となります。物理的に周りがよく見えていない場合と、見えてはいるがその視覚情報を有効に認知・活用できない場合があります。
車両内の混雑状況や空きスペース、降りようとしている人の動きなどが見えていなければ、気を利かせようがありません。これについては、原因はどういうところにあるのでしょう。
川西:まず、目に特段の疾患がないのにビジュアルフィールドが狭まる原因の1つはストレスだと言われています。ただ、そうしたストレス型は、ストレスがなくなると解消される可能性がある。より問題なのは、子供の頃の経験不足によって、見えてはいるけど知覚した周囲の環境情報を有効に認知・活用できない場合です。
またしても幼少期ですか。逆に聞くと、どうすれば、周辺環境を有効に把握し、電車で中ほどまで進む子になるんですか。
川西:有効なのは、5歳くらいからで構わないので、集団スポーツを習わせることです。特にサッカーがお勧めです。
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