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ただ、ここまで情報が正確かつ詳細だと、事故物件を抱えている不動産業者には相当目障りなサイトでは。サイト自体を閉鎖せよといったクレームはないんですか。

大島:不動産業界関係者の中には、むしろこのサイトを活用している人が多いですね。業界関係者に不満があるとすれば、例えば、事故物件の定義を巡ってです。当サイトでは「殺人」「自殺」「死者を出した火災」などに加えて「孤独死」が発生した不動産を、事故物件と定義しています。でも、業界では「孤独死は事故ではない」という認識が一般的なんです。そのため、「この部屋の元入居者は孤独死で、しかも死後わずか2日で見つかった。事故物件ではないので削除せよ」といった抗議が来る。でも、入居者の立場からすれば「孤独死は事故にあらず」という理屈は通らないと思うんです。そもそも、「すぐ死体が発見されたから事故ではない」と言いますが、なぜ施錠された部屋の中にある死体がすぐ発見されたのか考えてみてください。それだけひどい悪臭が漏れ出ていたからです。たとえ2日間でも、そのような状態にあった物件が事故物件ではないとは到底言い切れない。これが私の考えです。

なるほど。いずれにせよ今は、うっかり事故物件を借りてしまうなどということはないんですよね。殺人や自殺があった物件はその旨を契約時に告知する義務が業者にある、と小説「残穢」にも書いてありました。

大島:確かに、自殺や殺人、火災などで人が死亡したという心理的瑕疵(心理的な欠陥)がある部屋の場合、貸主(大家)は借り主(入居者)に対して、事前に告知する義務があります。

よかった。

告知義務はあるが、ルールはとても曖昧

大島:ただ、注意しなければならないのは、この告知義務はとても曖昧だと言うことです。例えば、事故が起きた後、入居者が次々に代わっていった場合、何人目に対してまで告知する義務があるのかは法令で定められているわけではありません。告知の年数としても定められていない。業界では、事故後1人目の入居者には伝えることが潮流になっていますが、2人目以降の入居者に対しては告知義務がないと考えられているようです。中には、事故があったのに、何事もなかったかのように振る舞い、通常通りの家賃で入居者を募集する業者も存在します。そんな悪徳業者や悪徳大家から、消費者を守るのも当サイトの重要な役割の一つです。さらに言えば、告知義務があるのは事故があった部屋だけとされています。このため、隣室や階下の部屋で事故があったという部屋に、何も知らずに住んでいるといったことはいくらでもあります。

そうなんですか…。でも、たとえそうだとしてもこの科学万能の21世紀の世の中に、小説「残穢」みたいに、やばい部屋だからと言って怪奇現象が起きるなんてことはないですよね? 事故物件の専門家として多くのいわくつき不動産を見聞きしてこられたと思いますが、その辺り、真実はどうなんでしょう。

大島:まず、同じマンションで立て続けに事故が起きる、ということ自体は珍しくありません。(事故物件サイトを見ながら)例えば、この東池袋の…この物件を見てください。

うわ、何ですか、このマンションは。平成14(2002)年6月25日に513号室で死体遺棄、平成22(2010)年8月22日に416号室で保護責任者遺棄致死、平成25(2013)年9月14日に首つり自殺。完全に「残穢」としか思えませんが…。

大島:こういう事例はレアではなく、先日もこんな事例を見つけました。昨年6階で殺人事件があったマンションの8階の部屋が入居者募集中で、チラシに「告知事項あり」という記載があったんです。