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大島:もともと実家の家業が不動産業だったんです。と言っても、仲介業ではなくて、自分たちで土地を買ってビルを建てたり、マンションを買って入居者を集めたり、といったオーナーでした。土地や建物をまずは買うわけですから、当然、目をつけた物件が“訳あり“でないかについては、その頃から気にかけていました。自分たちが気持ち悪がるというより、お客さんの中に、殺人事件や自殺があった物件には住みたくないと考える方がいましたからね。ただ、当時は、事故物件の情報が公になっていなくて困っていました。名簿業者など様々なルートを通じてデータを買えないか探し回ったのですが見つからず、結局、自分たちで情報収集活動を始めることにしました。サイト開設は平成17(2005)年9月のことです。

住所や部屋番号、死因まで掲載

大島てる(おおしま・てる)
平成17(2005)年9月に事故物件サイト「大島てる」を開設。当初は東京23区のみの事故物件情報を公示していたが、その後徐々に対象エリアを拡大していき、現在では日本全国のみならず外国の事故物件も対象としている。公式Twitter・Facebook・LINEアカウントがある。案内人を務めた本に『事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)。「事故物件ナイト」がロフトプラスワンウエスト(大阪)にて不定期開催中。事故物件サイトには英語版もある。元BSスカパー!「ALLザップ」特捜部最高顧問。その活動は「ウォール・ストリート・ジャーナル」でも紹介された。

サイトを見ると、日本全国及び海外の一部も含めた事故物件の住所や部屋番号、元入居者の死因などを知ることができます。どういう仕組みで、これだけの情報を集めることができるのですか。

大島:サイトを始めた当初は、自分たちだけで情報収集していました。図書館に行って昔の新聞を読んでどんな事件があったかを調べるといった、今思えば稚拙な手法でしたね。しかも、人的資源に限りがありますから、東京23区限定だったんです。情報の網羅性を高めるため、平成23年(2011)からは、情報を持つ人が誰でも自由に書き込める「投稿制」にして、対象エリアの制限も取り払いました。

「投稿制」だとでたらめな情報がアップされたり、間違った情報がいつまでも掲載されたりしないのですか。

大島:一時的には間違った情報が載る可能性があります。ただし、その場合でも遅滞なく削除・訂正される体制になっています。というのも、今では多くの不動産業者や大家さんがこのサイトをチェックしていて、間違った情報があると直ちに指摘してくれるからです。事故物件情報というのはネガティブ情報ですから皆さん敏感で、長期間放置されることはまずありえません。指摘さえすれば削除なり訂正なりしてもらえると皆さん知っていますから、弁護士名の書面などが届くことも今はほとんどないですね。「ウィキペディア」のように“みんなで作っていくサイト”にしたことで、正しさ・詳しさ・漏れのなさ・速さのいずれの点においても大幅に改善されたと考えています。

マンション名だけでなく部屋番号まで載っているのは驚きです。

大島:分譲マンションの場合、そのマンションの住民からの「自分の部屋じゃない」という情報提供に期待できます。殺人事件などがあった場合、一般メディアでは部屋番号まで報じることはあまりないですよね。でも、マンション名だけが独り歩きしてしまうと、関係ない部屋の持ち主まで風評被害を受けかねません。そこで、関係ない部屋の持ち主が「自分の部屋じゃない」と申告してくる。そうやって情報が集まり、最初はマンション名だけだったのが階数や部屋番号まで補足されていく。一般メディアは配慮のつもりで、事件・事故現場を曖昧に報じているのでしょうが、本来は「何々町の何々マンションのこの部屋で」と言うべきなんです。そうしないと、地域全体が風評被害を受けてしまう。