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日経ビジネス電子版(旧日経ビジネスオンライン)で人気を博した懐かしの企画について、執筆者本人に舞台裏を聞く本コラム。第2回は2016年4月21日に公開された「事故物件借りちゃった人の末路」だ。殺人や自殺などが過去に発生した“訳あり物件”。世の中には家賃が安いなどの理由から、そんな物件にあえて住んでいる人もいる。事故物件の流通はどうなっているのか。その実情を専門家に聞きに行ったのが本企画。筆者の鈴木信行副編集長とともに、その内容を振り返る。

(聞き手は山崎 良兵)

「あの企画の舞台裏」第2回の題材は、2016年4月21日に公開された「事故物件借りちゃった人の末路」です。これだけ猛暑が続くと、怪奇系コンテンツでせめて心を冷やそうとする方もいるかと思われますが、こういう記事を書いたということは、もともと心霊関係とかホラー的なものに興味があったんですか。

筆者:スカパー!のプレミアムサービスを契約しておりまして、MONDO TVの「ほんとにあった心霊写真」などは頻繁に視聴しています。

どういう部分が面白いですか。

筆者:心霊写真といっても様々なものがあって、オーブ(写真に写りこんだ発光する球体など)系から「あるべきものがない(ないはずのものがある)」系、普通に「人の顔」系まで幅広いですし、個人的に注目しているのはナレーションです。

ナレーション?

筆者:はい。心霊写真の解説をするのですが、その際、絶対に「断定的表現」は使用されないんです。例えば「これは、自殺し成仏できずこの世を漂う浮遊霊“だ”」などとは言わない。おそらく断定してしまうと、このSNS時代、「それなら科学的に証明してみろ」といったクレームが視聴者から殺到してしまうのではないでしょうか。

ではどんな言い回しをするのですか。

筆者:キラーフレーズの一つが「……とでもいうのだろうか」です。例えば「これは、自殺し成仏できずこの世を漂う浮遊霊“とでもいうのだろうか”」と使います。断定どころか伝聞ですらない。個人の感想です。なるほど、これなら視聴者から厳しいクレームが来る確率は大幅に下がるだろうなと感心しています。

分かりました。ではまずはその記事を改めて振り返りましょう。2016年4月21日に公開された「事故物件借りちゃった人の末路」です。どうぞ。


事故物件借りちゃった人の末路
事故物件公示サイト運営管理人、大島てる氏に聞く
(2016年4月21日)

 家の寿命は20年――。日経ビジネス本誌は2016年2月22日号でそんなタイトルの特集を企画した。「この国では多くの人が『住宅は安定した資産』と思い込んでいるが、それは大きな誤解」というのが企画の骨子。日本独特の業界慣習により購入直後から住宅価値が理不尽に下落する現実や、住宅品質の価値を認めないいびつな中古住宅市場などをリポートし、大きな反響を呼んだ。

 だが、今の時代、不動産の価値が下がる原因は、必ずしも「築20年の木造住宅の資産価値はゼロ」などといった、新築偏重の硬直的ルールだけではない。ピカピカの新築物件でもその価値を一瞬にして暴落させかねないのが、殺人や自殺などの“事故”だ。法的には、“訳あり物件”は告知義務があるなどとされているが、現実には、そうとは知らず事故物件に住んでいる人もいるという。同分野のスペシャリストに「事故物件を借りちゃった人」の末路を聞いた。映画化された小説「残穢(ざんえ)」のようなことは本当にあるのかないのか。

(聞き手は鈴木 信行)

事故物件公示サイト「大島てる」を運営管理されています。衝撃的な内容で思わず自宅や実家の近辺を検索してしまいましたが、どんな経緯でこのような取り組みを始められたのですか。