なるほど。グローバル化が進む今、いかにビジネスの場でドレスコードを守ることが重要なのか、クールビズの何が問題なのかなどよく分かりました。それではいよいよ本日、最も聞きたかった質問をぶつけたいと思います。
宮崎:何でしょう。
ツキノワグマかセクハラか、窮地に立つ男性社員
本日、最もお聞きしたかった質問。それは、「結局、男性社員は夏場、シャツの下に何を着ればいいのか」です。先程話に出たように、汗をかくことを考えれば、汗を吸い取り体感温度を下げ、匂いも防いでくれる肌着の着用は必須に思えます。ただうかつにランニングシャツなどを着ていると、今の時代、「ツキノワグマ」「オヤジくさい」などと嘲笑されかねません。
宮崎:対策の1つは、白いワイシャツの下に着ても透けにくい「ステルスカラー」の肌着を着ることでしょう。ただ、国際的な基準では、ビジネスシャツは下着として扱われており、例えば欧州では、ビジネスで着るシャツの下にアンダーウエアを着る人はほとんどいません。下着の重ね着になるからです。個人的にも、シャツの下は何も着ないのが正解だと思います。シャツが肌にくっついて気持ちが悪いというのであれば、生地を工夫すればいい。吸湿性と通気性に優れるフルオープンの長袖ポロシャツを着用する手もあります。
ポイントはそこです。「ツキノワグマ」呼ばわりされないために、ワイシャツの下には何も着ない。汗対策としては、吸水性や通気性の高い生地のワイシャツやビジネス用のポロシャツを選ぶ――ここまでは非常によく分かる。だが、まだ問題が残っています。多少品のない話で恐縮なのですが、ずばり「ワイシャツの下に何も着ないと、人によっては乳首や胸毛が透けかねないこと」です。実際、女性の間には「目のやり場がない」といったセクハラ的見地から、男性社員の肌着着用を強く訴える人も増えている。つまり、肌着を着れば「ツキノワグマ」呼ばわり、何も着なければ「セクハラ」認定。これでは世の男性社員は、どうすればいいか分かりません。
宮崎:実は私自身、「シャツの下から男性の乳首や胸毛が透けることを不快に思う人が増えている」という話を最近になってメディアなどで知り、戸惑っているところです。私のようにイタリアでファッションの基礎を学んだ者にとっては、これは難題です。というのもイタリアでは、胸毛が透けて嫌がられることはありません。むしろ逆で、男性の中にはわざわざ植毛して目立たせようとする人すらいる。同様に、「乳首透け問題」など最初から存在しないんです。
つまり、欧米のファッションの鉄則をいくら研究しても、この問題の解は見つからない、と。
宮崎:そうです。完全に日本固有の問題です。
理屈から考えると、体毛を処理し、女性のニップレス的なものを活用すればいいのでは。
宮崎:確かに男性用のニップレスも存在するようですけど、個人的にはとてもお薦めできません。体を鍛えてTシャツを着るのが痛々しいのと同じ理屈です。中高年男性がニップレスをして体毛を処理する姿を想像してみてください。
…。
宮崎:この質問に対する回答は1回保留させてください。私の感覚では、そもそも「男性の乳首や胸毛が透けることを不快に思う」人は、今はまだ多数派ではない気がするからです。それが日本社会のコンセンサスになった時、例えばNHKでこの問題が大きく取り沙汰されるようになった時には、専門家として必ず1つの答えを出したいと思います。
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