いにしえの大寺院や仏像は、それぞれの時代や国の最高の美意識と財力を結集して造られました。現代でいえば、国家の威信を賭けた公共建造物や宇宙開発のような位置づけであったといえます。わが国でも、6世紀半ばの仏教公伝以来、時の為政者たちは力を尽くして仏像を造り続けました。それは仏教が国家から庶民へと拡散して、もはや巨大な仏像を必要としなくなる15世紀頃まで続きました。

 本講座では、わが国において仏像が造られてきた時代背景を踏まえ、その節目節目で仏像の様式や制作技法が変遷した理由を解き明かしながら、仏像の発注者と制作者の葛藤などを、現代のビジネスシーンにも通じる物語としてお話ししていきたいと思います。