:この先に年金がちゃんと待っているよ、とか、でかい退職金が来るよ、とかいうことはなくなっている。

小田嶋:その代わり、「この先、俺はどうなっちゃうんだろう」という思いは、あふれるほど出てきている。

 これはキツいですよね。

小田嶋:ここから、要するに俺たちの還暦以降の身の処し方という問題にもつながっていくんだけど、これが入院をしてみると、周りはだいたい定年後のじいさんが主流なんだよね。

 小田嶋さん、岡さんのちょっと先輩の人たちですね。

小田嶋:入院時のじいさんたちと、ばあさんたちの身の処し方の違いというのは、すごい明らかで、じいさんたちのだめさ加減というのが病院では際立っているんだよ。だいたい看護師さん相手にいばって、迷惑をかけている感が、じいさんはとても強いのね。

 病院に行くと、無用に偉そうで横柄なおやじに遭遇しますよね。

小田嶋:あんた、別に会社じゃ偉かったのかもしれないけど、ここに来たらただの病人のじいさんでしょう、ということが、おやじたちは本当に分かっていないですよ。

:うん、分かっていない。

小田嶋:それこそ、タメ口のナースさんとか、上から目線で「だめでしょう、小田嶋さん」とか言ってくるナースさんとかがいるわけだけど、そういうコミュニケーションに対応できない。

■上下関係が決まらないと話せない?!

:そういうのは、僕、嫌だな、タメ口なんて。

 岡さんは、「なんだ、きみは(怒)」って、あっち側にいく恐れがありますね。

:何よ、それ。

小田嶋隆さん
小田嶋隆さん

小田嶋:おっさんやじいさんたちは、そういう人間関係の初動段階で、すぐに怒っちゃう。だけど、おばあさんたちは全然、フレンドリーなんですね。ナースさんに対しても、おばあさん同士でも、すごく仲良しなんです。しょっちゅう井戸端で集まって、いろいろな話をして、入院生活をエンジョイしているんですよ。

 一方、じいさんたちはお互い没交渉で、じいさん同士で口をきくなんてことはない。俺だってじいさんと話をするなんて嫌だから、全然口をきかない。ということで、男はフレンドリーになりようがないのよ。つまるところ、男は上下関係が決まらないと、付き合いができないんですよ。

 どっちが上かということですね。

小田嶋:女性はフラットな人間関係で、多少年が違っても、「あら、こんにちは」とか言って、いきなり話し始めてフレンドリーにできるんですよね。

編集Y:どうですか、女性側から見て。

 内心は違いますよ。

:内心はね。でもママ友というのがあるでしょう。あれはどういうことなの。

 仮面をつけて付き合う……とか。

:そういうことなの。

小田嶋:でもママ友というのも不思議なもので、男性の上下関係に当たるものが、自分の子供の成績だったり、自分のだんなの稼ぎだったり、あるいは自分の子供が行っている学校のグレードだったり、そういうもので結構自在なんですよ。

次ページ ■男も女も、人間に「猿山」あり