あ、それは『人生の諸問題 五十路越え』で、すでに十分語っておられますので……。

:会社の中で、訳の分からないゲーム、ルールが分からない最終ゲームが始まって、なんだかよく分からないぞ、と、まごまごしているうちに勝ち負けが決まっていって……(と、進行役の清野の仕切りを意に介さないで話を続ける岡康道であった。50代がなぜ辛いのか、詳しくは単行本でお読みください)。

 ……(仕切りをあきらめて)はい、あらためてお話を引き取りますと、ここにいるみんなが、男性女性を問わず、その苦しさを実感しています。

:ただ、僕や小田嶋みたいに会社を途中で辞めてフリーランスになった人間は、そういうのがない。だから五十路についてかくも深く気楽に話し合うことができたのは、フリーランスを選んだ者の特権じゃないだろうか。

小田嶋:サラリーマンをやっていたら、話し合えないよね。その時期に、一番分かり合える人間と、一番遠ざからなきゃいけなかったりするし。そこが面倒くさいところだよね。

■うまくいったあいつ、いかなかった自分

:だって一番仲良かったあいつが執行役員になって、俺が子会社に出向になった、ということが五十路のサラリーマンには起きるじゃないか。

編集Y:(手を振り挙げて)はい、はい、この場で唯一の五十路サラリーマンから。仲良しのあいつが国立大の教授に転職して、俺が副編集長からシニア・エディターという肩書になる、みたいなのもありますよ。

 それって、元・日経BPのプロデューサーで、「諸問題」チームの一員でもあったヤナセ教授のことですね。

編集Y:そうなんですよ。

小田嶋:シニア・エディターって何?

編集Y:直訳すると、年寄編集者です。「年寄って大相撲かよ。何で彼が教授で、オレが年寄編集者なんだ」って思いが……。

 編集Yさん、気持ちは分かるけど、カッコ悪いわね。

編集Y:ううう。

:で、自分の中でも、それから社内でも、なぜなぜなぜ、っていう話が渦巻くわけじゃない。それが人事異動という形で1年とか半年にいっぺんぐらい起きるわけじゃない。それに比べると僕たちフリーランスの人生は、そういう波乱はないわけだから。

小田嶋:日本経済が上向きのころだったら、そのあたりは処理できたんだよ。中島みゆきが主題歌を歌っていたNHKのあれ、何という番組だったっけ?

:「プロジェクトX」のこと?。

小田嶋:そうそう「プロジェクトX」。

 ちょっと一瞬、脳梗塞で入院時の小田嶋さんの記憶レベル(※こちら)になっちゃいましたね。

小田嶋:あの番組は、今見ると全部ブラック企業の話なんだけど。

:僕は喜んで見ていたけど、確かにそうだな。

小田嶋:冷静に見ると、みんないきいきとブラック残業にいそしんでいました、というひどい話ばかりなんだけど、あれをすごくハッピーな物語として処理できていたのは、経済が右肩上がりの中の話だったからですよ。同じことを、現在の縮みゆく社会の中でやったら、ありえないでしょう、ということになる。

:実際、世の中の動きとして、ありえない、という方向性になっているしね。

小田嶋:今の50代の人たちがキツいというのも、この先、日本は成長が見込めない時代になるよ、ということがでかいよね。

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