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(前編はこちら

小田嶋隆さん(左)、岡康道さん(右)

前編は、小田嶋さんがのぞいてきた「地獄の一丁目」のお話をうかがいました。

小田嶋:まあ、別にまだ一丁目から帰ってきたわけじゃないんだけどね。

:でも、小田嶋は別に変わらなかった。深刻になってもいなかった。むしろ面白がっているような感触もあった。

小田嶋:だって、表面的にはどこも痛くないから、結局、あんまり深刻に考えようがないのよ。

:何しろ自覚症状がないんだもんね。

小田嶋:最初の脳梗塞では、入院当日と翌日に、言語療法士および運動療法士といったリハビリスタッフの方たちが来て、俺はテストを受けたの。「100から7を引いてください、そこからまた7を引いてください」って。

ひー、そんなの、できないっ。

:今からできないと言って、どうするの。僕もできないけど。

(イラスト:モリナガ・ヨウ)

小田嶋:リハビリテストの定番なんだけど、「自動車」と「おでん」と「大根」とか3つの単語を初めに覚えてください、と。で、「覚えましたね」と言われた後に、「100から7を引いてください」「また7を引いてください」が来て、それで40いくつまで行ったぐらいの時に、「さっきの3つの単語は何でしたか?」と聞かれるの。まあ、子供の時にやった知能テストみたいなものですね。

:嫌だな、それは。

小田嶋:鳥とネズミと何とかが4ついて、仲間外れはどれですか? みたいなものとか、パズルになっていて、はまらないのはどれですか? みたいなやつ。いい大人にこれをやらせるのか、と、ちょっと屈辱を感じつつやって、自分ではそこそこできたつもりでいたんだけど、後で聞いたら当日のスコアは結構やばかったみたいで。

そこらへんも、自覚症状はなかったんですね。

小田嶋:自分じゃ全然自覚がなかったけど、入院当日、翌日、最終日で比べると、当初の数字はやばかったらしいの。

うーむ。

編集Y:介護関連の連載をやっていますと、よくコメント欄に「自分は認知症になったら、人に迷惑をかけたくないから自死する」ということを書き込む方がいるんですが……。

わっ、唐突に何を?