小田嶋:メディア表現の劣化で続けると、ネットニュースでは、新聞の見出しが今、マッシュアップみたいになっているんだよ。

:マッシュアップって、何?

小田嶋:IT業界では既存のコンテンツを混ぜ合わせて、新しいサービスを作り出す、ぐらいの意味で使われている用語なんだけど、とにかく文脈の違うものを混ぜて、耳目を集める、みたいな手法。新聞見出しのマッシュアップでいうと、例えば東武東上線の「ときわ台」駅で、踏切事故がありました、と。そういうときの新聞の見出しというのは、「ときわ台駅で踏切事故、23歳の巡査死亡」みたいなやつが通例で、その見出しだけで記事の内容が分かるように作るでしょう。つまり、記事の一番短い要約が見出しになっている。

:それが見出しの前提だもんな。

小田嶋:長いこと、そういうことになっていた。だから新聞って、記事全部を読まなくても、見出しだけをさーっと斜めに見ただけで、なんとなく中身が分かったじゃないか。でも、今、ネットニュースの見出しって、釣り広告みたいになっていて、「え? これどういうこと?」って、思わずクリックするように作ってあるわけだよ。

:例えばどんな感じ?

小田嶋:例えば、ときわ台の事故の見出しは、「危ない、そのとき巡査は飛び込んだ」という具合になる。

東スポ化しているんですね。

小田嶋:そう、それが全国紙に及んでいる。こっちは、「危ない、そのとき巡査は」という文字を読んで、その後、巡査はどうしたんだろうと、謎に負けて、ついクリックしてしまう。

:ただ、紙の新聞は、普通のちゃんとした見出しになっているだろう、いくらなんでも。

小田嶋:使い分けられている。俺は以前に毎日新聞の紙面批評を1カ月やったことがあって、そのときにネット版と紙版の見出しが違うことを発見したんだよ。ネットの方がすごく扇情的にできているんだけど、実は全体的に紙の見出しも、そっちに近づいているんだよね。

:よくないよね。

小田嶋:新聞をすごく斜め読みしにくくしていますよ。

そこかい!

小田嶋:いや、長い目で見ると、よくないです、はい。

:それにしても東京でオリンピック・パラリンピックはどうなるのだろうか。社会的な混乱だけでなく、経済の方面でも、新型コロナショックの影響が甚大になっているし。(……と、対談中は思っていたのですが、3月24日に延期が決定しました)

小田嶋:今のところの政権って、導火線に火が付いている爆弾を、みんなにパスしまくって、最後に誰が持っているか、という話になっているじゃない。

:立憲民主党だって、共産党だって、逆にみんな、政権は今、持ちたくないよね(笑)。

小田嶋:まあ、俺らは、休校で売り先が減ってしまった牛乳を、粛々と飲むことぐらいしか、やることがないけど。何か乳牛ってやつは、乳を出し続けていないと、体がだめになるらしいですね。

:そうなんだ。どうでもいいけど。

小田嶋:いや、だから、コラムニストと一緒なんですよ(笑)。やめると、詰まっちゃう。だから、だらだらと吐き出してないとだめだという。牛とあんまり変わらない仕事なんですね。

ついに自分を牛に例える境地にいたった小田嶋さんですが、そんなコラムニストの新刊本、みなさん、よろしくお願いいたします。ほら、編集Yさん、本の宣伝に着地しましたよ!

編集Y:あああ(涙)。

延々と続く無責任体制の空気はいつから始まった?

現状肯定の圧力に抗して5年間
「これはおかしい」と、声を上げ続けたコラムの集大成


ア・ピース・オブ・警句<br />2015-2019<br />5年間の「空気の研究」
ア・ピース・オブ・警句
2015-2019
5年間の「空気の研究」

 同じタイプの出来事が酔っぱらいのデジャブみたいに反復してきたこの5年の間に、自分が、五輪と政権に関しての細かいあれこれを、それこそ空気のようにほとんどすべて忘れている。

 私たちはあまりにもよく似た事件の再起動の繰り返しに慣らされて、感覚を鈍麻させられてきた。

 それが日本の私たちの、この5年間だった。
 まとめて読んでみて、そのことがはじめてわかる。

 別の言い方をすれば、私たちは、自分たちがいかに狂っていたのかを、その狂気の勤勉な記録者であったこの5年間のオダジマに教えてもらうという、得難い経験を本書から得ることになるわけだ。

 ぜひ、読んで、ご自身の記憶の消えっぷりを確認してみてほしい。(まえがきより)

 人気連載「ア・ピース・オブ・警句」の5年間の集大成『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』3月16日、満を持して刊行。

 3月20日にはミシマ社さんから『小田嶋隆のコラムの切り口』も刊行されます。

小田嶋隆×岡康道×清野由美のゆるっと鼎談
『人生の諸問題 五十路越え』もございます


もっとゆるっとした会話で笑いたい方には『<span class="textColRed"><a href="https://www.amazon.co.jp/gp/product/4296103091/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4296103091&linkCode=as2&tag=n094f-22&linkId=e0781c3cfafc5b625bea431353492e09" target="_blank">人生の諸問題 五十路越え</a></span>』も絶賛発売中です。
もっとゆるっとした会話で笑いたい方には『人生の諸問題 五十路越え』も絶賛発売中です。

 「最近も、『よっ、若手』って言われたんだけど、俺、もう60なんだよね……」

 「人間ってさ、50歳を越えたらもう、『半分うつ』だと思った方がいいんだよ」

 「令和」の時代に、「昭和」生まれのおじさんたちがなんとなく抱える「置き去り」感。キャリアを重ね、成功も失敗もしてきた自分の大切な人生が、「実はたいしたことがなかった」と思えたり、「将来になにか支えが欲しい」と、痛切に思う。

 でも、焦ってはいけません。
 不安の正体は何なのか、それを知ることが先決です。
 それには、気心の知れた友人と対話することが一番。

 「ア・ピース・オブ・警句」連載中の人気コラムニスト、小田嶋隆。電通を飛び出して広告クリエイティブ制作会社「TUGBORT(タグボート)」を作ったクリエイティブディレクター、岡康道。二人は高校の同級生です。

 同じ時代を過ごし、人生にとって最も苦しい「五十路」を越えてきた人生の達人二人と、切れ者女子ジャーナリスト、清野由美による愛のツッコミ。三人の会話は、懐かしのテレビ番組や音楽、学生時代のおバカな思い出などを切り口に、いつの間にか人生の諸問題の深淵に迫ります。絵本『築地市場』で第63回産経児童出版文化賞大賞を受賞した、モリナガ・ヨウ氏のイラストも楽しい。

 眠れない夜に。
 めんどうな本を読みたくない時に。
 なんとなく人寂しさを感じた時に。

 この本をどこからでも開いてください。自分も4人目の参加者としてクスクス笑ううちに「五十代をしなやかに乗り越えて、六十代を迎える」コツが、問わず語りに見えてきます。

 あなたと越えたい、五十路越え。
 五十路真っ最中の担当編集Yが自信を持ってお送りいたします。

この記事はシリーズ「人生の諸問題 令和リターンズ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。