:野村さんが南海ホークスで選手兼監督をしていたときに、沙知代さんが野村さんと付き合いだして、「あの選手は使うな」とかチーム運営にも口を出すようになった。選手からしたら、冗談じゃないよね。「あの人をなんとかしてください」ということで、主力選手たちが球団に訴えて、めちゃめちゃにもめた。で、後見人の高僧まで出てきて、「沙知代さんと、野球のどっちを取るのか」と、さとされたら、「はい、分かりました」といって、沙知代さんを取った人……といわれているんですよ。

うーむ、ハタから見て、不思議な関係です。

小田嶋:並の人間には理解できないですよ。驚くべきことですよ。野村沙知代さんという人は、沙知代という名前からはじまって、自称した学歴も、経歴もウソなこともさることながら、あらゆるところでトラブルメーカーであり、少年野球チームでも、親から集めたお金を私腹に入れた疑惑で、訴訟を起こされかねないといった、ひどい話がいくつもあったでしょう。

:脱税で拘留もされているものね(2002年)。

小田嶋:そういう人と生涯添い遂げたというのも、偉かったよね。自分にはマネできない、ということで。

:野村さんにしてみれば、野球のこと以外は、全部命令されている方が楽だったんじゃないの。

小田嶋:それはあるかも。仕事のことしか考えたくないという人間は、それ以外のことは全部嫁さんに丸投げにしたい、というのが、ちょっとあるんじゃないかな。「あなた、今日の晩ご飯、何になさる?」じゃなくて、「あなた、今日は唐揚げを食べるのよ」と決めつけられた方が楽だ、と。これは落合博満さんにもちょっと似た雰囲気を感じない?

:似ている!

小田嶋:俺なんかはときどき沙知代さんと落合氏の奥さんがごっちゃになっていた。あれぐらい強烈な人じゃないと無理だということでしょう。面白いのは、野村さん、落合さんは、日本の野球の2大知性だったということで。

:そうなんだよ。落合がYouTubeで野球についてしゃべっているのを見たりすると、論理も分析も見事ですからね。

小田嶋:落合という人もしゃべらせると本当に頭がいい。

:ただ、暗いんだけどね(笑)。

小田嶋:そう、どちらも暗いの。だからボヤキ芸が成立したんだけど。

この対談にちょっと似ていますね。

小田嶋: ……まあ、そうね。

:話を変えよう。この間さ、血液の検査をしたんだよ。そうしたら、僕はテストステロンの値が同世代の平均の半分しかないということが分かって。

逆じゃないんですか? 「上から適応」のジャイアンのキャラ(前回参照)らしくないですね。

:でしょう? それで僕も、「これは間違いだから、2週間後にもう1回測ってください」とお願いして、もう1回測ってもらったら、やっぱり半分しかなかった。

小田嶋:あら、本当。

:このままいくと、すごくおとなしいおじいさんになっちゃう。外見とは別に、僕はもう極めておとなしい人みたいなの、血液的には(笑)。

小田嶋:昔の値は高かったんじゃないの?

:高いかどうかは知らないけれど、昔はあったと思うよ。だって、それがなきゃ電通を辞めたりしないし、既存の枠組みと戦ったりできないじゃないか。でも、この話をタグボート内でしたら、「そういえばこの何年間、岡さんが怒っているのを見たことないですね」っていわれて、ますますまずいな、と思って。

小田嶋:だったら、もういいじゃない?

いやいや。

:そうだよ、そう簡単にあきらめられないでしょう。

小田嶋:もう怒るあれでもないでしょう。

:だけど怒らないとだめじゃない、人間。

小田嶋:ハネ満、振ってもおとなしくしているという(笑)。

:そうそう。だから僕、弱くなっているでしょう、マージャンも。