小田嶋:だって、フランス語と英語を同じ時間にダブルで登録しているんだよ。病から復活して、新学期をはじめたら、これはどういうことなのか? と。
早速、どちらかの単位を落とす、という話になっちゃったんですね。
小田嶋:昔はe登録とか、そういうのがまるっきりなかったから、ダブりのチェック機能もなく、いい加減で。
岡:僕が理解している小田嶋隆というものから、適切な科目を推理して登録した。単位を取るのが楽だとか、試験がない先生だとか、出欠を取らないとか、そういうのは一切考慮していない。
小田嶋:何だか知らないけど、こいつの趣味で西洋史とか取らされたんだよ、俺は。
岡:でも、優しいと思わない? 小田嶋と僕って、学部も違うんだよ。それで教育学部の科目登録は、いろいろな条件があってすごく面倒くさいわけですよ。だから、まあ、間違っちゃったけど。
小田嶋:そう、面倒くさかったね。
岡:ね、優しいでしょう。
ご自分の登録に重複はなかったんですか?
岡:僕、その辺は抜かりがないですから。
全員:(出た……。)
小田嶋:ところで、今日は話題って、用意してあるんですか?
5年間の「空気」はどう変わったのか
編集Y:はい、それはもう、小田嶋さんの新刊本について、ということで。3月16日に、弊サイト連載「ア・ピース・オブ・警句」の集大成、『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』が書店の棚を飾ります。
岡:(まだ印刷済みの本ができていなかったので、カバー見本を見つつ)「アベさんと日本の5年間」――って、これ、サブタイトルなの? すばらしいね。
編集Y:あ! ……それは見本用の仮のもので、最終的には改題しました。で、巻末には過去5年分、2015年から19年の、小田嶋さんのコラムの掲載履歴を付けさせていただいています……ううっ。
ヤナセ:どうしたの?
編集Y:これを見ていたら、ちょっと泣けてきました。小田嶋さんは、なんてマメに、倦まずたゆまず淡々と毎週毎週、書き続けてくださったんだろう、と……。
その前に、私は担当の編集Yの苦労を思って、泣けてきましたけど。
岡:そうだよねえ。本来は。
小田嶋:編集Yさん、大変でしたよ。いつも締め切りと筆者の筆進みの板挟みで。
あんたが言うんかい! まあ、そこで今回は、この5年間をお二人に振り返っていただこうかな、というわけです。
岡:確かにこの5年間ということでいえば、小田嶋には災難がたくさん降り掛かってきた年月だった。
小田嶋:自転車で転んで、足、折ってから、糖尿病でしょう、膝の大手術でしょう、脳梗塞でしょう。
ちなみに皇居前、小雨の竹橋で自転車ごと転がって救急車で運ばれたのが、2015年。詳細は『人生の諸問題 五十路越え』(日経BP刊)に譲りますが、小田嶋さんの入院先にこのメンバーで押しかけて、そこでも対談を敢行しましたね。
小田嶋:そうね、そこから始まって、5年の間に入退院を繰り返しましたが、まあ、年を取ることのいいことは、そういうことがあっても別にどうってことない、ってことでしたね。
編集Y:え。
それって、本当?
岡:だったら、それほど貴重な5年間じゃなかった、ということになるぞ。
小田嶋:そう。同じことが30代、40代で起こったら、結構ショックを受けていたはずだけど。
岡:そうだよ、25歳から30歳でそうなっていたら、人生が別のモノになる。
小田嶋:足を折って走れなくなったというのが30代だったら、俺にしても、「ああ、私の人生は半分終わった……」とおそらく思うよね。けれども、今だとたいして残念じゃない。というのはある。
岡:もう陸上部じゃないしね。
小田嶋:日常でそれほど走ってないしな、って。そもそも、走れないしな、というのもあるけど。
だんだん、悟りへの道が開けてきました。
岡:だいたい、2015年って何があった年?
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