コーチは人間の感情や哲学的な問題まで学ぶ

現地でバルサのコーチに取材した中竹氏(写真左)
現地でバルサのコーチに取材した中竹氏(写真左)

中竹:昨日、バルサのコーチに取材をして、最も重要なことは何かと聞きました。すると彼は「選手に教えることではない、コーチングを学ぶことが重要だ」とおっしゃった。コーチとして、コーチングを学ぶことが、システムを維持・発展させるのに重要だ、と。

リアド:それこそがバルサという組織を向上させるコーチの精神だと思います。

ソスナ:コーチが彼の哲学とシステムをすり合わせて、それを選手のプレーや振る舞いにうまく落とし込んでいかなければなりません。そのためにも、コーチはサッカーの知識だけではなく、人間の感情や哲学的な問題も理解しなくてはならない。そうしてはじめて、バルサを勝利に導くことができるのです。

リアド:この考え方が浸透しているから、バルサは常に興味深い成長を遂げているのです。長い時間をかけて構築されたシステムがベースにあるからこそ、バルサのプレーに独自性が現れるのです。

ソスナ:バルサは2008年、グアルディオラを監督に据えました。今でこそ世界一の名将と評価されていますが、バルサの監督に就いたときには、ほとんど実績がなかった。

 ただ、彼はプレーヤー時代にバルセロナのキャプテンを務めていました。バルサの文化や哲学に対する理解は深かったので、適応も早かったですね。監督の経験はなくとも、システムは身に付いていたわけですから。

 そして、彼は監督になってすぐにチームのシステムを進化させて、チームを率いた4年間で多くのタイトルをものにしました。

中竹:「ラ・マシア」やバルサは、どのように戦術を浸透させているのでしょうか。

リアド:「全員がチームプレーヤーたれ」「コーチを尊敬し、理解に努めよ」。そういう思想がチーム全員に浸透しています。

 バルサのトレーニングは、いつだってボールを使います。ただ理由なく走るというメニューはありません。ボールを使って、状況に応じてすべきことを徹底的に理解する。それがフットボールの神髄だという価値観を身に付けるのです。

 それは、何年にもわたって守り続けられたものです。マーク(・ソスナ氏)に言わせれば、この文化はラ・マシアからくるものということになります。

ソスナ:シャビのようにラ・マシア出身で、トップチームに入った人は、やはりチームの中心になります。でも、ラ・マシア以外から来た選手をうまく溶け込ませる仕組みもきちんとあります。

 今も活躍するストライカーのルイス・スアレスを獲得したときは、バルサの価値観と衝突するのではと心配されたものです。彼はワールドカップの舞台で相手選手にかみついて話題になったので(笑)。

 ただ、バルサに入って以来、スキャンダルは起こしていませんし、メッシらとも見事なコンビネーションを見せています。彼は美しくバルサの文化に溶け込んでくれました。

リアド:シャビやイニエスタなどという、バルサの中心だった選手たちは、自分勝手さを感じさせない謙虚な人物ばかりですね。

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