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子供たちもプロと同じ振る舞い

中竹氏は、バルサの小中学生世代の練習も見学したという

FCバルセロナのクラブとしてのありようも、つぶさに視察して回ったのだとか。

中竹:衝撃的だったのは、FCバルセロナの小学生~中学生世代が使っている練習場を見に行った時のことでした。ちょうど小学校5~6年あたりの子供たちが練習していたんですが、全員振る舞いがプロフェッショナルなんです。

 遊び半分なところなんて全くないし、渋々取り組んでいる子は一人もいません。日本の部活で見かけるような「やらされている感」が一切ないんです。

 自分を鍛え、さらに高みへと持っていけるように、一心不乱に練習している。練習試合でゴールを決めた時なんかも、誰も「やったー!」などと無邪気によろこんだりせず、淡々としている。練習でゴールを決めることが目標ではなく、高みへ登るための過程とよく分かっているからでしょう。

 それから、バルサでは「ロンド」と呼ばれる基本的な練習をとにかくたくさん実施します。輪になってパス回しをして、内側に入ったディフェンスにボールをとられないようにするという、非常にシンプルなものですが、これをいろんなバリエーションでこなしていく。

 スピードアップしたり、人数を増やしたりと、徐々に強度が上がっていきます。そうしてそれぞれの選手の集中度、本気の度合いがどんどん高まっていくんですね。どこか鬼気迫るものがありました。

 13~14歳のカテゴリーで、上のチームで契約してもらえるかどうかという時期を迎えた選手たちの試合形式の練習を見た時に驚いたのは、例えば豪快にスライディングタックルをした後に、また立ち上がる動作や、ディフェンダーがフォワードに抜かれた後にボールを追いかけるスピードが、ものすごく速い。

 日本でラグビーのコーチをしていると、一番口を酸っぱくして言わなければいけないのが、リアクションを速くすることや、きつい時、ピンチの時にこそ、ちゃんと相手にプレッシャーをかけろということです。そうした細部を徹底させるのが、若年層やアマチュアのチームだと大変なんです。これは、集中度や本気度に関わることなのだと思います。

 その点、バルサの練習では、このあたりの意識レベルがあまりに高い。10代の選手たちなのに完全に意識や振る舞いはプロフェッショナルでした。

 不思議に思って聞いてみたんです、「リアクションを速くしろとか、プレッシャーをかけろと、厳しく指導しているんですか」と。すると、「いや、それを指す言葉すらない」というのが答えでした。

 つまりは言葉にせずとも、文化として浸透しているということです。

 バルサでサッカーに関わる人たちにとって、高い集中力と本気度を保つプロフェッショナルな精神は、あって当たり前のものになっている。ここまで文化を浸透させるには、長い年月がかかったはずですよ。

(5回目は2019年8月22日掲載予定)