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ペイパル創業者と哲学研究者がタッグ

 パランティアのビッグデータ解析のノウハウは、諜報のプロたちを魅了した。CIAは、冷戦時代に旧ソ連を中心とする東側世界と情報戦を繰り広げ、今も中国やロシアなどの国家や、テロリスト集団と対峙する“情報のプロ”である。彼らがパランティアの力を認めたことが、米国などのさまざまな政府機関が同社の製品を採用するきっかけになった。

 パランティアは03年、米インターネット決済大手ペイパルの共同創業者だったピーター・ティール氏らが創業した。ティール氏は米フェイスブックを創業期から支えたベンチャー投資家として知られ、米トランプ大統領の顧問でもあり「トランプ政権を陰で操っている」とも報じられている人物だ。

 パランティアを起業したきっかけは01年の同時多発テロ。ペイパルのネット決済の不正送金の検知システムに使っていたソフトウエア技術を、テロ組織に資金が流れることを防ぐために利用しようと考えた。

 ティール氏は、米スタンフォード大学時代の友人だった哲学研究者のアレックス・カープ氏をCEO(最高経営責任者)に招き、パランティアを共同で創業。ティール氏自身もスタンフォード大学で哲学を学び、同大学で教べんを執っていた哲学者で比較文学者でもある故ルネ・ジラール氏の下で学んだ経験を持つ。哲学という共通の関心を持つ2人は気脈を通じていた。

パランティア・テクノロジーズCEOのアレックス・カープ氏は見た目もインパクトがある(写真:ロイター/アフロ)
 

 独特の髪形と鋭いまなざしが印象的なカープ氏は経歴もユニークだ。スタンフォード大学のロースクール(法科大学院)を終了するまでは絵に描いたようなエリートコース。だが、その後にドイツに留学してフランクフルト大学の博士課程で哲学を研究する。

 師事したのは哲学者のユルゲン・ハーバーマス教授。『コミュニケーション的行為の理論』で知られ、フランクフルト学派の批判理論の精神を軸に、包括的な社会哲学を打ち立てた人物だ。カープ氏は、ハーバーマス教授の下で、博士号を取得した。