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金額よりも戦略の話を

山川:理屈がなくて、数字だけがドンと……。

メア氏:そう。最初から何倍にすべきだという話でしょう。安全保障の責任分担という点では、安倍政権になってから、日本が貢献できることは増えています。それに、日本独自の防衛能力や抑止能力も向上させようとしています。それをトランプ氏は十分に理解していない。

 残念ながらトランプ氏は周囲の側近の話にあまり耳を傾けません。ただ、安倍総理の話は聞きますから、この件は、総理自身がしっかりと説明する必要があります。

山川:メアさんの話を聞いていると、思いやり予算が大幅に引き上げられる可能性は低そうです。ただ、日本の防衛予算引き上げの要求が強まることはないでしょうか。

 現在、アメリカは北大西洋条約機構(NATO)加盟国に防衛費分担金の増額を迫っています。NATO加盟国は国防予算を24年までに各国のGDP(国内総生産)の2%まで引き上げることで合意しています。これに対して、日本の防衛予算は、GDP比で見ると現在1.3%程度です。

メア氏:私は日本の防衛予算は増やすべきだと思っています。ただ、GDP比という数字はあまり意味がない。GDPは各国の置かれている状況や経済成長の仕方で変わってくるものですから。それに日本の場合は、2%に増やしても、自衛隊が人手不足ですから、急には吸収できないでしょう。

 繰り返しになりますが、重要なのは、数字ではなく、安全保障に対する考えです。国を取り巻く脅威がどれだけあるのか。それにどう対応しようとしているのか。

 私は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」やF35ステルス戦闘機の配備は必要だと思います。ミサイル防衛とともに敵基地反撃能力を強化することがとても重要です。敵側から飛んできたミサイルを最初は迎撃できても次々と攻撃が来ると難しくなる。弓矢でいえば、次々と矢が飛んできたら、すべて落とすことはできないでしょう。それと同じです。ミサイル防衛は迎撃と反撃、両方がないと十分な抑止力になりません。

 日本には、F35戦闘機に搭載できるノルウェー製の「JSM(ジョイント・ストライク・ミサイル)」やアメリカ製の長距離空対地ミサイルを購入する計画があると公表されています。私はそうした方向性は正しいと考えています。

西野:最後の川柳にもつながりますね。

損得で 安全保障は 語れない?

 メアさんは、安全保障を金額だけで語ってはいけない、と繰り返し主張しています。しかし、アメリカの一般の人たちは、東アジアの安全保障をどこまで理解しているのでしょうか。イメージ先行で、日米同盟を公平ではないと感じている人が多いのではありませんか。

メア氏:そうは思いません。確かにトランプ氏は大統領選の演説中に、いわゆる「安保タダ乗り」論を展開しました。ただ、そこにある論拠は80年代当時と変わっていません。

 実際には安保に関する日本への政策は、超党派で議論しています。トランプ大統領の一存で決められるものではありません。

山川:ただ、現実にはメアさんのような専門家で、極東の安全保障の実態をしっかりと理解している人は少数派でしょう。「なぜアメリカ人が極東に行って血を流さなければならないのか」「駐留経費を負担しなければならないのか」と感じている人は多いのではないでしょうか。