全6800文字

「核の傘」、雨はどっちから?

メア氏:はっきり言って、おかしいですよ。

 「核の傘」は、雨がどっちから来ると想定したうえでの発言なのでしょうか。同盟国であるアメリカに傘を向ける必要はないし、日本からの脅威に備える必要もありません。韓国に対する脅威は、北朝鮮と中国のはずです。

山川:北朝鮮ですら、日米韓だけではなく、中国からの攻撃や核の脅威を感じているという指摘もありますね。

メア氏:そうです。だからあまり意味がない発言です。文大統領に近い人物がこういう発言をすることに、一体どういう意味があるのか。

山川:在韓米軍の撤退・縮小論について、アメリカの本音は?

メア氏:撤退する可能性は低い。確かに2016年の大統領選の期間中、トランプ大統領は撤退の話を持ち出しました。しかし、トランプ氏はもともと行政経験のない人です。大統領になってからは、少しは理解するようになった。駐留経費の話はしても、撤退という話はしなくなっています。

 一方、文大統領は北朝鮮や中国に接近しており、アメリカから見ると問題が多いリーダーです。ただ、ほとんどの韓国人は、米軍の存在に複雑な気持ちがあるにしても、米軍がいなくなると危ないと理解しているのではないでしょうか。

山川:駐留経費については、いかがですか。アメリカは今、トランプ大統領の方針を踏まえ、従来の5倍相当の額を要求しています。この交渉がこじれて、「負担しないなら、在韓米軍を縮小させる」という方向にいく懸念はありませんか。

メア氏:5倍という話が浮上したときに、アメリカの議会から、ものすごく反発がありました。もしトランプ氏が本気で5倍にしようと考えているのなら、大間違いです。同盟関係で考えるべきことは、今後の安全保障の分担であって、おカネの話ではない。

 それに駐留経費の負担増を韓国に飲ませれば、大統領選に有利だという指摘も当てはまりません。それで韓国との安全保障上の関係が損なわれたら、むしろアメリカ国民から批判されます。

西野:米中摩擦が激しくなる中で、韓国を中国に接近させたら、選挙にもマイナスになる?

メア氏:そうです。そもそも、アメリカの一般国民は、外交や安全保障への関心が低い。選挙で一番重要なテーマは、経済や社会保障です。

 とはいえ、急にトランプ大統領が韓国との関係を悪化させれば、それは選挙にとって、マイナスに働くでしょう。

山川:ということは、米韓の駐留経費の問題については、ほどほどの線で収まる?

メア氏:5倍とはいきませんが、韓国側が多少、駐留経費を増やす余地はあるでしょう。あくまでも、まずおカネありきではなく、抑止力を向上するために納得のいくものを、増やすということです。

 現時点でアメリカ政府は、なぜ5倍なのか、根拠を明確にしていません。説明できないからでしょう。大統領が5倍と言ったから、周囲が理由を見つけようとしている。こうした安全保障をおカネで考えようとする姿勢自体が間違っています。