全6638文字

「シルバー民主主義」をどう克服する?

増田氏:シルバー民主主義といわれる問題ですね。

 しかし本来、この問題は、政争の具として扱うべきテーマではありません。医療費負担で一番痛みを被るのは、まだ生まれていない世代かもしれません。政治家はそこまで視野に入れて、世代間の公平性を図るべきだと思います。

山川:それともう1つ気になるのは、医療費負担をもっぱら年収で区切って決めようとしていることです。

 現在の高齢者の生活水準は、本当に年収だけで決まっているのでしょうか。むしろフローよりもストック。つまり土地や金融資産の有無で決まっているような気がしてなりません。少なくとも私の周囲ではそう見えます。むしろ蓄えが乏しいから、お年寄りになっても頑張って働いている人がたくさんいます。

 にもかかわらず、資産は捕捉しづらいので、収入で負担割合を決めます。医療費に限った話ではないですが、税にしても社会保険にしても、あらゆる負担をフローの多寡で決めるのは、制度上欠陥がありませんか。

増田氏:そうですね。特に金融資産については、もっと捕捉して「応能負担」のような形で、豊富に資産をお持ちの方には多く払ってもらうべきだと思います。

 ただ、金融資産をどうやって把握するのか、ここはなかなか難しい。捕捉の仕方に濃淡があると、かえって逆差別にもなりますから。

西野:マイナンバーでうまく捕捉できないのでしょうか。

増田氏:それをやるべきでしょうね。そうすると公平が進む。

山川:ここがまた抵抗が強い。資産を持っている人ほど抵抗するから(笑)。

増田氏:方向性はある程度、みなさん共有できているのですが、現実には総論賛成で、各論になると反対の声が出てしまう。

西野:話を聞いていると暗い気持ちになるのですが、もっとみんなで経済成長しようとか、そちらの方向で議論すればいいのでは。

増田氏:確かに経済を成長させることで痛みを和らげるのは大事なことですが……。

 あえて言わせていただければ、それによって甘い前提になるのは困ります(笑)。「これだけ経済成長して、税収も増えるから、大丈夫だ」と。

西野:どこかで聞いたような話ですね(笑)。

増田氏:経済成長予測は、そういう形で使われることがありますから(笑)。私は甘い前提に基づいた不確実な経済成長よりも、高齢者がこれだけ増えるという確実な予測に基づいて対策を打った方が賢明だと思いますよ。

西野:そうですか。分かりました(笑)。増田さん、どうもありがとうございました。

(注:この記事の一部は、BSテレ東「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」の番組放送中のコメントなどを入れて、加筆修正しています)