当時のソ連と現在の中国の違い

山川:西側諸国は、南北を統一させる場合、北朝鮮を民主化していくイメージを描いていたと思うのですが、現在の金正恩体制を踏まえると、それは難しい。中国も望まないでしょう。

真壁氏:やはり中国が共産党の一党独裁のままで力をつけてきたことが大きい。鄧小平の改革開放路線で、中国がここまで成長すると思っていた人は少ないでしょう。

 米中対立は簡単には氷解しません。両国のせめぎ合いが続くとすれば、仮に南北が統一に向かうにしても、お互いの体制を認め合う緩やかなアライアンスという形を採らざるを得ないでしょう。

山川:1つ違うシナリオがあるとすれば、北朝鮮でクーデターが起きることでしょうか。

真壁氏:今でも「そう遠くない将来に独裁体制が崩れる」と予測する人はいます。しかし、そうした論文はずっと前から存在したのですが、実際にはそうなっていません。西側に住んでいる我々から見れば、抑圧された社会はいずれ開放されると考えがちなのですが、実際はそうならない。

山川:まさに中国自身が民主化せずに、ここまで発展しました。

真壁氏:今のところは、そうですね。

山川:30年前にはインターネットも普及していませんでした。当時に比べれば、西側諸国との生活水準の違いなど、様々な情報が入るはずなのに、それでも独裁体制が堅持されています。

 というよりも、最近は格差や難民の問題が強まり、各国でポピュリズム政党が台頭してきています。ドイツでも統一から30年を経て、最近では揺り戻しが起きているようです。むしろ民主化は後退しているようにも見えます。

真壁氏:歴史を専攻している人たちは、民主化の流れは不可避と考えがちなのですが、そうでもなさそうです。特にトランプ大統領を見ていると、そう感じます。

山川:アメリカ自身が、反対の方向に進んでいますよね。

真壁氏:要するに、民主的に物事を決めるよりも、一人のリーダーが決めたら、それに従えというロジックです。

 ボリス・ジョンソン首相のイギリスを見ていても、「民主化を進めれば経済がうまくいく」という信念のようなものが揺らいでおり、むしろ最近は反省の機運すら出てきたようにも感じます。

西野:3つ目の川柳です。

統一で 韓国経済 蘇る?

 韓国の文大統領は、南北統一を、韓国経済をよみがえらせる起爆剤にしたい考えのようです。

山川:日本の植民地支配からの解放を記念して、今年8月15日に開催された「光復節」のイベントでは、文大統領はこう宣言しました。「2032年に(夏季)五輪を南北で共催する」「2045年には平和と統一で一つになった『ワンコリア』を実現する」と。

 一方で「南と北を合わせれば8000万人の単一市場ができる」「世界経済6位圏の国ができる」と強調しています。

 文氏はこの演説で「平和経済の構築」という表現を繰り返しており、理想はともかく、本音での統一のイメージは、経済先行のようにも見えます。

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