南北の経済格差44倍

西野:そして、経済格差が大きいですね。1人当たり国内総生産(GDP)で見ると、当時のドイツがおよそ2対1に対して、南北は44対1。

真壁氏:最大の障壁です。韓国の国民が負担を被ることになります。

西野:統一に向かえば、経済制裁も解けて、北朝鮮は緩やかに豊かになると思うのですが、そんなに簡単な話ではない?

真壁氏:どのくらいの期間で成果を測るかで、見方は変わってきます。当面の間は相当の困難が伴います。

 ドイツ統一のときには、西と東の通貨を1対1で交換しました。私は当時、銀行にいてロンドンに駐在していたのですが、ドイツ国債は1年以上下がり続けました。経済が大混乱したのを覚えています。

 その後、ようやく労働市場の改革が始まったのは2000年代になってから。そこまでに10年以上かかりました。

山川:経済格差が2対1だったドイツでもそれだけ苦労したということは、南北ではもっと時間がかかる?

真壁氏:想像がつきません。44対1というのは、格差なんて生易しいものではない。

西野:そもそも韓国経済は足腰がしっかりしていないともいわれていますが。

真壁氏:韓国は輸出依存度が約4割と高い。よい時はよいのですが、世界経済の影響をもろに受けます。ここにきて米中の衝突があり、サプライチェーンが分断されている状況なので、かなり苦しい。

西野:政治体制で見ると、資本主義と社会主義だったドイツに対して、朝鮮半島の場合は、北朝鮮が事実上の独裁国家。しかも、核開発を進めています。

真壁氏:世襲制の独裁。統一したときにどうするのか。

山川:歴史をたどると、両国とも過去に何度か統一後の統治形態について触れています。

 2000年の「南北共同宣言」を踏まえると、北朝鮮は双方が地域政府を作る連邦制を主張し、韓国は、連合、連邦、完全統一の3段階統一論を唱えてきた経緯があります。韓国の方がより緩やかなところから始めようという考えです。いずれにせよ、双方とも大幅な自治を認めるという点では変わりません。

真壁氏:果たしてその形態を国と言っていいのか、微妙なところはありますが、現在の金王朝を前提とすると、連合や連邦という形を採るしかないでしょう。

西野:次の川柳です。

米中露 南北統一 興味なし?

 朝鮮半島を取り巻く大国の思惑はどうなのでしょう。先ほど真壁さんは、38度線が地政学上の均衡を保っているとおっしゃいましたが、やはり周辺の大国はそれほど強く統一を望んでいるわけではない?

山川:東西ドイツが統一したのは、ソ連が弱体化し、東欧諸国に民主化の波が押し寄せていたときでした。統一に反対する勢力がほとんど存在しなかったと言っていい。

 現在は「新冷戦」とも呼ばれるほど、中国が台頭し、アメリカと衝突しています。そして、トランプ大統領になってから、アメリカは自国第一主義が強まりました。民主化を広めようとする熱意が薄まっているようにも感じます。

真壁氏:そうですね。それが当時と現在との最も大きな違いでしょう。当時は東ドイツを支えようとする力が、政治的にも経済的にも弱かった。実際、ソ連は数年後に崩壊しましたから。

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